[新動向]

住友林業が住宅5棟でP2P電力取引の実証実験を開始!

― AIとブロックチェーンで構築したプラットフォームを活用 ―
2020/03/06
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

資源環境事業や住宅・建築事業などを展開している、住友林業(東京都千代田区)(注1)は、2020年17日、住宅展示場のモデルハウス5棟で、AIとブロックチェーンを活用して構築された「電力P2P取引プラットフォーム」(民間電力取引所)を利用して、電力小売(P2P電力取引)の実証実験を開始した。
住友林業が需要家サービスプロバイダとなり、住宅展示場(発電家)に直接売電する。

 今回、住友林業が行う実証実験で活用するP2P電力取引プラットフォーム(DGP)注2は、デジタルグリッド(東京都千代田区)注3が開発したものである。

 DGP(デジタルグリッドプラットフォーム)は、日本初の民間による「自由な電力取引市場」で、デジタルグリッドが運営する。このDGPを利用する「サービスプロバイダ」(SP)としてメンバーとなることで、自由に電力を選択して売買することが可能となる(図1)。

図1 DGP(デジタルグリッドプラットフォーム)は「自由な電力取引市場」

図1 DGP(デジタルグリッドプラットフォーム)は「自由な電力取引市場」

出所 https://www.digitalgrid.com/service.html

 実証実験は、次の2つを使用して行っている。

  1. 「DGP」(デジタルグリッドプラットフォーム)
  2. 「DGC」(デジタルグリッドコントローラ:IoTデバイス)注4

 DGCは、DGPと通信(3G:W-CDMA)するためのIoTデバイスとして、「発電家側」と「需要家側」の双方に設置される(図2)。

図2 DGP(プラットフォーム)とDGC(IoTデバイス)の関係

図2 DGP(プラットフォーム)とDGC(IoTデバイス)の関係

DGP:Digital Grid Platform、デジタルグリッドプラットフォーム
DGC:Digital Grid Controller、デジタルグリッドコントローラ
Wi-SUN:Wireless Smart Utility Network、920MHz帯(日本)を使用するスマートメーター用無線ネットワークIEEE 802.15.4g規格
Type B(Bルート):スマートメーターと建物内に設置された機器を結ぶ通信経路
出所 https://www.digitalgrid.com/service.html

 今回の実証実験は、住友林業が、①DGP(プラットフォーム)を活用して発電企業(発電家)と電力の卸供給契約を結ぶことによって、②需要家サービスプロバイダ注5となり、③住宅展示場5棟注6に、P2P(発電家と需要家間で電力を直接売買)で電力を小売する。DGPを活用した電力には、2月3日から順次、切り替えられている。

 同実証実験では、DGPはAIを活用した正確な電力の需給予測と、自動的に需要と供給を一致させるマッチングシステムを実装しており、これによって、管理コスト削減が可能かどうかを実証する。さらに2020年度中には、再エネ電源を識別して電力を小売する実証も行う予定である。

 実証を行う展示場では、DGPには、電力売買取引に加えて環境価値属性の取引プラットフォームも構築されていて、再エネの電力自家消費の環境価値(CREV、非化石証書)注7をDGC(IoTデバイス)によって測定し、発電源情報をブロックチェーンに記録する実験も行っている(図3)。

図3 環境価値(CREV)属性の取引プラットフォームも構築しているDGP

図3 環境価値(CREV)属性の取引プラットフォームも構築しているDGP

出所 https://www.digitalgrid.com/service.html

 DGCで測定した環境価値は、2020年4月以降に取引が可能となる予定注8で、住友林業では、この環境価値の買取りサービスも検討している。


▼ 注1
住友林業株式会社

▼ 注2
DGP:デジタルグリッドが推進する電力の自由な選択・売買(P2P電力取引機能)を可能とするプラットフォーム。

▼ 注3
デジタルグリッド株式会社

▼ 注4
DGC:電力取引機能をもつDGP(プラットフォーム)と通信しつつ、各住宅等に設置されたスマートメーターのデータを正確に取得し、環境価値(CREV)をブロックチェーンで証書化するIoTデバイス。

▼ 注5
需要家サービスプロバイダ: 電力使用者に対して小売供給契約を締結する取次事業者のこと。

▼ 注6
東京都の三鷹第一展示場1棟・第2展示場1棟、神奈川県の相模原古淵展示場1棟、神奈川県の川崎市・新百合ヶ丘展示場1棟、千葉県の柏の葉展示場1棟の計5棟。

▼ 注7
環境価値(CREV):CO2を排出しない効果の価値。SBTやRE100企業などが排出するCO2と相殺する目的で使用される。
CREV:Certificate of Renewable Energy Value

▼ 注8
非化石価値取引市場に関する既存契約見直し指針(案)

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...