[スペシャルインタビュー]

東京ガス 事業計画グループ 戦略統括チームリーダー 小屋 かをり氏に聞く!東京ガスの「電気+ガス」総合エネルギー戦略

― チャレンジ2020ビジョンの実現に向けた新サービスの全容 ―
2017/07/27
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2016年4月の電力小売全面自由化に続いて、2017年4月からガスの小売全面自由化がスタートした。その結果、日本でも総合エネルギー市場が誕生し、エネルギー大競争時代に突入した。登録済みのガス小売事業者は全国で1,417社(2017年6月2日時点[注1])となり、すでにスイッチング申込件数(注2)は、全国で約24万件(2017年6月2日時点)に達している。
東京ガス株式会社は、「チャレンジ2020ビジョン」のもとにIoTを駆使し、環境に配慮しながら、新たな総合エネルギー市場で、相次いで新料金メニューや新サービスを展開している。同社 事業計画グループ 戦略統括チームリーダー 小屋 かをり(こや かをり)氏に、同社の「電気+ガス」総合エネルギー戦略をお聞きした。

Kaori Koya

東京ガスのチャレンジ2020ビジョン

〔1〕総合エネルギー市場に向けた経営戦略「チャレンジ2020ビジョン」

─編集部:2017年4月1日から、ガスの小売全面自由化がスタートしました。今回で5度目となるガス小売自由化(すでに63%が自由化)注3では、残り約37%に相当する「約2,019万件もの一般家庭や、小規模事業所(商店やコンビニなど)」が、都市ガスの供給サービスを提供する事業者を自由に選択できるようになりました。その新たな市場規模は、約2.4兆円にのぼると予測されています。これに関して、東京ガスはどのような戦略でビジネスを展開されていますか?

小屋 はい。当社(東京ガス、表1)は、日本においてもこのような電力とガスを統合した本格的な「総合エネルギー市場」の到来を予測して、2011年11月に9年先の2020年をめざした経営戦略を策定し、「エネルギーと未来のために東京ガスグループがめざすこと〜チャレンジ2020ビジョン〜」を発表しました注4。このビジョンの実現に向けて、2020年までの期間を、次のように3つに区切って展開しています。

(1)2012〜2014年度の3年間が「ホップ」

(2)2015〜2017年度の3年間が「ステップ」

(3)2018〜2020年度の3年間が「ジャンプ」

表1 東京ガス株式会社のプロフィール(敬称略)

表1 東京ガス株式会社のプロフィール(敬称略)

出所 東京ガス資料をもとに編集部が作成

─編集部:チャレンジ2020ビジョンとは、どのような内容なのでしょうか。

小屋 現在は上記「ステップ」の最終年度の段階であり、具体的には、2017年4月13日に「2017年度 東京ガスグループの取り組みについて」注5を発表し、次の内容を柱に推進しています。

〔2〕2017年度 東京ガスグループの取り組み

小屋 1つ目は、「チャレンジ2020ビジョン」の実現に向けて、前述の「ステップ」期間

(2015〜2017年度)に、①総合エネルギー事業の進化、②グローバル展開の加速、③新たなグループフォーメーションの構築に取り組んできました。

 2つ目は、特に2017年度は、ガス小売全面自由化という新たなステージを迎えて、「ガス・電気・リキッドガス(LNGやプロパンガス)」に「サービス」を加えた総合エネルギーを提案することで、お客さまにお届けする付加価値を拡大し、当社を選んでいただけるような取り組みを一層強化しています。

 3つ目として、さらに海外事業については、海外11拠点注6を含めた新たな体制のもと、事業拡大をさらに加速していきます。具体的には、図1に示すように、2020年に向けて事業構造や事業基盤を変革しながら、利益構成において「ガス事業」「電力・その他事業」「海外事業」の比率を、7:2:1から2:1:1とすることを目指しています。

図1 2020年に向けた東京ガスの事業構造・事業基盤の変革と利益構成

図1 2020年に向けた東京ガスの事業構造・事業基盤の変革と利益構成

出所 「東京ガスCSRレポート2016」、2016年10月第2版

 4つ目に、グループ構成として明確化した7つの事業ドメイン注7について、相乗効果を発揮できるよう、事業を具現化していきます。すなわち、これまでの都市ガス事業を柱とした「富士山型経営」から、複数の大きな峰(事業)をもつ「八ヶ岳経営」への変革を推進しています。

 さらに、急速に進展するIoTやAIなどを含むデジタル化社会の到来や、COP21(パリ協定)にも対応した低炭素社会実現に向けた環境政策を加速させるなど、事業を取り巻く環境に大きな変化が生じていることを踏まえ、事業構造・事業基盤の強化策に取り組んでいきます。


▼ 注1
内閣官房日本経済再生総合事務局「未来投資戦略2017〜Society 5.0の実現に向けた改革〜」(2017年6月)、4ページ参照。

▼ 注2
スイッチングとは、現在契約しているガス会社を他のガス会社に切り替えること。2017年6月2日時点のスイッチング申込件数は、全国で約24万(239,465件)。その主な内訳は、近畿エリアが156,298件(65.3%)、中部・北陸エリアが35,400件(14.8%)、関東エリアが31,829件(13.3%)となっている。近畿エリアが突出しているのは、関西電力の強力な販促の結果といわれている。関東エリアでは、2017年7月から東京電力エナジーパートナー(EP)が参入するなど、激戦が予想されている。
http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/gas/liberalization/switch/

▼ 注3
大口需要家を皮切りに自由化が順次拡大し、1995年、1999年、2004年、2007年の4度にわたる制度改革によって、ガス市場の63%までが自由化されてきた。2017年4月から5度目の自由化で残りの約37%が開放され、ガスの市場も電力に続き100%自由化が達成となった。
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/kihonseisaku/gas_system/pdf/01_05_00.pdf

▼ 注4
http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20111115-01.pdf

▼ 注5
http://www.tokyo-gas.co.jp/Press/20170413-01.pdf

▼ 注6
9カ国11拠点。アメリカ(ヒューストン)、オーストラリア(パース、ブリスベン)、タイ(バンコク)、インドネシア(ジャカルタ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール(シンガポール)、フィリピン(マニラ)、ベトナム(ハノイ事務所、ホーチミン事務所)、フランス(パリ)

▼ 注7
7つの事業ドメイン:1都市ガス事業、②電力事業、③リキッドガス事業、④暮らしサービス事業、⑤エンジニアリングサービス事業、⑥地域開発サービス事業、⑦海外事業

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