特定付加/全負荷に対応するハイブリッド蓄電システム
〔1〕ハイブリッド蓄電システムの構成
住宅用のハイブリッド蓄電システムは、どのように構成されているか。また、災害による停電が発生した場合に、どのように動作するか。ここで詳しく見てみよう。
図1は、家庭内の全負荷に対応したハイブリッド蓄電システムの構成例である。
図1 全負荷対応型ハイブリッド蓄電システム(特定付加対応も可能)
CT:Current Transformer、変流器。1次電流(主幹の大電流)を2次電流(小電流)に変換する機器。主幹(外部からの電力線)に流れる電流を感知する「主幹電流センサー」ともいわれ、電流が流れていないことを感知すると、停電になったことがわかる。
出所 『HUAWEI:FusionSolar「住宅用蓄電システム」、Interop 2021』をもとに編集部で加筆修正して作成
全負荷対応とは、停電時に、家庭内の負荷(テレビや冷蔵庫、照明、空調、炊飯器等々、通常利用しているすべての機器)が使えるように対応しているケースである。
これに対して、特定負荷とは、停電時に、例えば冷蔵庫などがある1階の台所やリビングルームにだけ、すなわち宅内の必要最低限の場所にだけ電気を送るケースである。
ファーウェイの住宅用のハイブリッド蓄電システムでは、全負荷および特定負荷の両方に対応可能であるが、図1には、全負荷対応型のハイブリッド蓄電システムの例を示している。
〔2〕停電時:5秒以内に自立運転モードに切り替え
同システムは、災害などによる停電の場合には、次のような仕組みで素早く対応する。
外部(電力会社)から図1中央右の❶全負荷用分電盤注3への供給電力が停止した場合、図1中央左のパワコン(SUN2000、❷)は、❸主幹電流センサー(CT)によってその停電を感知し、❹データ収集装置(SmartLogger)経由で、停電情報を❺管理システム(FusionSolar APP、後述)に送る。
❺管理システムは、停電情報をもとに自立運転モードに切り替え、❻全負荷に電力の供給を開始する。
この切り替えにかかる時間は5秒以内と、瞬時に行えることも、同システムの特徴の1つとなっている。
このとき、図1左側に示す「太陽光パネル」と「LUNA2000蓄電システム」は、4.95kWのパワコン(SUN2000)と連携して動作する。また、このパワコンからは、AC100VとAC200V(例:図2に示す空調用電源)を同時に出力できるようになっている。
図2 停電時にパワコンと蓄電池によって、全家電(全負荷)に電気を供給する例
〔3〕停電時の家電機器の使用電気量の例
図2は、一般家庭で午前10時に停電して自立運転機能に切り換わり、同日の夕方18時に復電した場合の、各家電機器の使用時間と使用電気量の例を示したものである。
導入する蓄電システム容量は、図2に示すような使用例を参考に、昼間の「太陽光パネル」からの発電量や、夕刻や早朝の「蓄電システム」(LUNA2000)からの電気の供給量などを勘案し、各家庭で使用している家電機器の種類やその使用パターンに合わせて、検討することが重要となる。
また、EV(電気自動車)をもつ家庭では、EVからのV2H注4による電気利用も含めて総合的に考慮することも必要である。
▼ 注3
分電盤:電力会社からの電気(幹線からの電気)を、例えば住宅の1階や2階に分配できるようにする機能を備えた機器(ボックス)のこと。単に電気を分配するだけでなく、電気の使いすぎで過度に電流が流れた場合にそれを遮断するブレーカーや、漏電を防止する漏電遮断器等を内蔵し、火災などを防ぐ機能も備えている。パワコンの出力と商用電力系統との連系点ともなる。
▼ 注4
V2H:Vehicle to Home。EV(Electric Vehicle、電気自動車)に搭載された蓄電池の電気を家庭に供給して利用する形態。