洋上風力発電におけるシーメンスガメサの展開
〔1〕最新のDD方式の14MW機「SG 14-222 DD」が完成へ
現在、各国では脱炭素戦略を強力に推進しているため、洋上風力発電は次世代の主力電源として期待が大きい。
特に、洋上風力発電機の分野では、世界最大規模の14〜15MW級の風力タービン発電機が相次いで登場し、熾烈な競争が展開されている。例えば、米国GEリニューワブルエナジー(日本では東芝と製造で協業)は、14 MW仕様の Haliade-X(ハリアデ-X、2021年10月プロトタイプ稼働)注4を、デンマークのヴェスタス(Vestas、日本では三菱重工と販売で協業)は、同社初の洋上風力発電15MW機「V236-15.0」を発表した(プロトタイプ稼働は2022年の後半)注5。
これに対してシーメンスガメサ注6では、ローター(回転羽根)直径222mの14MW機「SG 14-222 DD」のプロトタイプを2021年に完成〔設置場所はデンマークのOsterild(オステリルド)〕し、2024年から世界市場に投入する(図5)。
図5 SG14.0-222 DDが2021年内にプロトタイプ完成予定
出所 「シーメンスガメサ記者懇談会」、2021年10月21日
〔2〕DD方式6〜14MWの洋上風力タービンが勢揃い
図6に、シーメンスガメサの先進的なDD技術を採用した洋上風力発電機(出力とローター直径)について、出力6 MW/ローター直径154mの「SWT-6.0-154」から、出力14MW/ローター直径222mの「SG 14-222 DD」までの風力タービン発電機の一覧を示す。
図6 シーメンスガメサの洋上風力発電用ダイレクトドライブ(DD)技術の進化
AEP: Annual Energy Production、年間発電量、SWT:Siemens Wind Turbine、SG:Siemens Gamesa、DD:Direct Drive
出所 「シーメンスガメサ記者懇談会」(2021年10月21日)に一部加筆修正して編集部作成
これらの洋上風力タービンのうち、8MWの「SG8.0-167 DD」に続いて、11MWの「SG11.0-200DD」が、風車に関する台風クラス(Class T)注7の過酷な風条件への耐性を持つIEC型式認証を取得した注8。
台風の上陸が多い日本を含むアジア太平洋地域にとって、IEC型式認証の取得は、台風に強い風力タービン発電機として期待されているところだ。
日本における洋上風力発電市場への取り組み
ここまで、シーメンスガメサの洋上風力発電の最新動向を紹介してきたが、最後に同社の日本市場における展開を見てみよう。
豊富な洋上風力資源を背景に、日本政府は2030年までに10GW、2040年までに30〜45GWという洋上風力発電計画を発表した。これによって日本の洋上風力発電市場は拡大され、これに中国やインド、オーストラリアなども含むアジア太平洋地域が、欧州に次ぐ大きな洋上風力市場になろうとしている。
シーメンスガメサは、前述の通り、日本では1999年以来、陸上風力発電で20年以上の経験があり、洋上風力発電においても日本でのプレゼンスを徐々に拡大している。
今後、日本市場で洋上風力発電ビジネスを飛躍的に拡大するには、図7に示すように、洋上風力発電に関して、日本国内における各種製品や技術の調達とともに、品質を維持した価格競争力の両立が求められる。
図7 バリューチェーン全体にわたる日本国内調達化と価格競争力の両立を目指す
出所 「シーメンスガメサ記者懇談会」、2021年10月21日
そのためには、洋上風力発電のための国内サプライチェーンを確立することが必要だ。具体的には、多角的に日本企業との連携を進め、風力タービンの部品や主要な原材料調達方法の開拓、日本における運用・保守サービス用の船舶の確保、保守サービス用の人材の雇用と関連企業との連携等々、日本のステークホルダーとの協力が欠かせない。
日本でも、洋上風力発電が脱炭素社会を実現する次世代の主力電源として位置づけられているだけに、シーメンスガメサの今後のビジネス展開に期待したい。
▼ 注6
シーメンスガメサは、30年前の1991年に、世界初の洋上風力発電プロジェクトをデンマークのビネビュ(Vindeby)に設置。そのプロジェクトの設備容量は4.95MWで、単基容量450kW、ローター直径35mのボーナスエナジー(Bonus Energy、シーメンスが買収)時代のタービン11基で構成されている。現在、1,200台以上のDD方式の洋上風力タービンが設置されている。
▼ 注7
Class T(Typhoon):IEC(International Electrotechnical Commission、国際電気標準会議)が定めたTクラス相当の風速(10分間で毎秒57メートルに達し、毎秒最大79.8メートルの3秒間の突風)に耐える耐性を備えていること。