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豪雪地帯の水道施設を監視してLoRaWANでデータを送信、ハタプロが実証実験の結果を公表

2017/04/13
(木)
SmartGridニューズレター編集部

ハタプロは、長野県大町市で水道施設の監視データを送信することを想定したLoRaWAN通信の実証実験を実施したと発表し、その結果を公表した。

ハタプロは2017年4月12日、長野県大町市で水道施設の監視データを送信することを想定したLoRaWAN通信の実証実験を実施したと発表し、その結果を公表した。大町市は全国でも有数の豪雪地帯。施設に設置したLoRaWAN発信機が雪に埋もれても、遠距離通信が可能かどうかが大きな検証ポイントの1つだった。

図 実験の場となった長野県大町市の冬の様子(左)。右写真の点線で丸く囲んだところにはLoRaWAN発信機などが埋もれている

図 実験の場となった長野県大町市の冬の様子(左)。右写真の点線で丸く囲んだところにはLoRaWAN発信機などが埋もれている

出所 ハタプロ

実験期間は2017年の冬季期間中。大町市役所本庁舎にLoRaWANゲートウェイを設置し、大町市内の配水池11カ所と水源3カ所にLoRaWAN発信機を設置して、通信環境を検証した。その結果、積雪状態で、発信機が雪に埋もれているような状況でも通信ができ、最長で5kmの通信が可能と確認できたという。最大2mの積雪に発信機が埋もれた状態でも通信できるか検証したところ、通信条件を工夫すれば期待通りの通信性能を発揮するということが分かった。積雪状態でのLoRaWANの通信性能検証はまだ日本国内では例がなかったという。ハタプロはこの結果から、日本のほかの豪雪地帯でも同様の結果を期待できるとしている。

もう1点、山林での通信性能も検証した。LoRaWANを始めとする920MHz帯を使う通信技術は、送信先まで見通せる状況と、送信先の間に障害物がある状況では通信性能が極端に変わる。例えば、都市部では通信先が見通せるところからならば思ったよりも遠い位置からの通信が可能だが、間にビルなどの障害物が入ると通信がほとんどできなくなる。大町市にはそのような建物は少ないものの、起伏が多い地形で、広大な山林がある。検証の結果、地形の起伏や山林によって通信性能が大きく変わることが判明した。特に山中を通す通信を安定させるには、途中に中継ポイントを設ける必要があるとしている。

結論としてハタプロは、豪雪地帯である大町市内でもLoRaWANネットワークを構築できるとした。大町市の水源や配水池の一部は山中にあり、携帯電話通信網のエリア外となっている。冬になったら積雪で現場に近づくことも困難になる。現在のところ、近づくのが困難な施設でも、なんとか足を運んで、目視で設備を確認しているという。積雪がない夏季の点検作業に比べたら、冬季の作業は比較にならないくらいの重労働だろう。

しかし、携帯電話も通じないような山中でもLoRaWANネットワークを構築できることが分かった。これから本格的にネットワークを構築し、必要な場所にセンサーと通信機を設置していく必要があるが、完成すれば冬季の設備点検作業は従来とは比べ物にならないくらい楽なものになるだろう。さらにハタプロは、LoRaWANネットワークを山岳救助支援や獣害対策にも利用できるとしている。


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ハタプロ

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