COP21「パリ協定」と低炭素社会の実現
表1 環境省【CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業】「データセンタオープンイノベーションコンソーシアム」メンバー一覧(順不同)
出所 環境省・平成28年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業、「データセンタの抜本的低炭素化」、2016年11月7日
〔1〕すでに驚異のPUE=1.1を実現
2015年12月に成立したCOP21「パリ協定」注3の成立以降、全世界的に低炭素社会/脱炭素社会を目指す動きが加速している。この新しい波は、IoT社会を支えるデータセンター(クラウド)にも波及し、環境省はCO2排出削減対策に向けた実証事業注4を推進している。
同実証事業は、すでに2013(平成25)〜2015(平成27)年度に実施され、電力消費70%削減という高いハードルを越えて、驚異のPUE=1.1を実現している。今回の実証事業はこれを引き続くもので、2016(平成28)〜2018(平成30)年度の3年間(途中で評価を受けることを前提に)に、さらなる低消費電力化に取り組んでいる(結果として6年間の実証事業となる)。表1に示すような先進企業による「データセンタオープンイノベーションコンソーシアム」が結成(2013年7月)されており、今回のプロジェクト(2016年度予算:2億5,000万円)では、発想を従来とは大幅に転換した実証事業が展開されている。
〔2〕AIエンジンで全体を最適化
ここでまず、前回の取り組みとその成果を簡単に紹介しておく。
図1は、2015年まで取り組んできた実証事業におけるデータセンターの基本構成である。この実証では、それまでデータセンターにおけるサーバなどの各ICT機器や空調、電源などを個々に省電力化注5することを主眼にし、これらを統合化してデータセンター全体の最適化をどう実現するかが課題であった。
図1 平成25(2013)年度の環境省事業‐AIクラウド(Software Defined Data Center)
A-DCIM:Augmented Data Center Infrastructure Management 、拡張データセンター基盤管理
出所 環境省・平成28年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業「データセンタの抜本的低炭素化」、2016年11月7日
そこで、図1中央のA-DCIM注6(AIエンジン:機械学習)を開発し、サーバなどのICT機器や空調、電源、廃熱利活用などに関して、省電力化の全体最適化を実現したのである。
▼ 注1
次世代データセンター:サーバ収容数が100〜1,000台程度のビル型中小規模データセンター。例えば銀行や病院、自動車会社のプライベートクラウドなどのデータセンターの規模。
▼ 注2
PUE:ピーユーイー。Power Usage Effectiveness、電力使用効率。データセンター設備のエネルギー効率を表す指標。数値が小さいほど効率がよくPUE=1.0が最も効率のよい夢の値(これ以下の値はない)。
▼ 注3
パリ協定(the Paris Agreement):2015年12月12日(現地時間)、フランス・パリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)において、2020年以降、すべての国が協調して地球温暖化問題に取り組むための仕組みを示した新国際条約のこと。COP21の参加国196カ国が全会一致で採択した歴史的な条約。
▼ 注4
環境省・平成28年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業。2016(平成28)〜2018(平成30)年度の3年間を予定。
▼ 注5
サーバに関してはファンレスサーバを導入し、空調では「床下壁吹き出し方式」から「壁かけ吹き出し方式」を採用して、風量を多くして風速を押さえるようにした。電源については、直流電源装置(HVDC-12V)の導入で低損失電源システムとした。さらに、ICT機器からの発熱を3つのアイル(通路)で段階的に上げて廃熱利用するスーパーホットアイルを設置し、湿度調整に利活用するなどで省電力化した。
▼ 注6
A-DCIM:Augmented Data Center Infrastructure Management、拡張データセンター基盤管理。機械学習による総電力最小化。