風力発電市場における3つの事業
2017年4月、ドイツのシーメンス(Siemens)の風車製造部門とスペインのガメサ(Gamesa)が合併して設立されたシーメンスガメサ(表1)は、2020年9月末現在、全世界の風力発電市場で次のような3つの事業を基盤として発展してきた(図3)。
表1 シーメンスガメサ(SGRE)のプロフィール(敬称略)
※1 大型原子力(1基:100万kW)の約115基分に相当(注:設備利用率:25~30%程度であることに留意)〕
※2 Pty Ltd:Proprietary Limited、非公開株式有限責任会社。
「シーメンスガメサ記者懇談会」、2021年10月21日等の資料をベースに編集部で作成
図3 シーメンスガメサ(SGRE)の世界市場における3つの主要な事業基盤
出所 「シーメンスガメサ記者懇談会」、2021年10月21日
- 陸上風力発電:96.2GW(1979年以降の累積導入量)
- 洋上風力発電:18.4GW(1991年以降の累積導入量)
- サービス(整備・保守):77.7GW
特に、シーメンスガメサの洋上風力発電の累積導入量は18.4GWと、世界の累積導入量35.3GW〔図2(2)〕の、実に52%(=18.4GW÷35.3GW)以上も占めており、世界市場のトップベンダとなっている点に注目できる。
さらにシーメンスガメサは、1980年代からは中国、インド、日本、オーストラリアなどを含む、アジア太平洋地域においても事業活動を拡大し、すでに、
- 陸上風力発電は17.1GW以上
- 洋上風力発電では台湾に128MWを設置したのをはじめ、現在1.9GWを建設中
- サービス(整備・保守)分野では11.5GW以上
などのビジネスを展開している(2021年6月末現在)。
シーメンスガメサの日本市場の状況
〔1〕陸上風力は538MWが稼働
シーメンスは日本との関係は古く、160年前の1861年にシーメンスのテレグラフ(電信機)を江戸幕府に披露したことを皮切りに、歴史的に多くの協力関係を築いてきた。
風力発電の関係では、1999年に北海道苫前町(とままえちょう)に1MWの風力タービンを備えた、日本初の大規模陸上風量発電所「苫前グリーンヒルウインドパーク」(1MW×20基)注3を設置し稼働した。
その後の、日本におけるシーメンス(現在はシーメンスガメサ)の風力発電機の導入状況を表2に、図4に同社が日本に設置・建設中の風力発電を日本地図上にプロットしたものを示す。
表2 日本における風力発電に関する20年以上の実績と導入量
出所 「シーメンスガメサ記者懇談会」、2021年10月21日
図4 シーメンスガメサが日本に設置・建設中の風力発電
出所 「シーメンスガメサ記者懇談会」、2021年10月21日
1999年以降、252基のWTG(Wind Turbine Generator、風力タービン発電機)が設置され、その総出力は538MWとなっている。さらに115基のWTGが建設中で、その総出力は484.6MWとなっている。
〔2〕DD方式の第1号機が秋田県秋田港で稼働
日本におけるDD方式風車の第1号機(SWT 3.0-101、出力3MW、回転羽根直径:101m)は、2015年に秋田県秋田港に設置された。現在、日本市場においてシーメンスガメサでは、DD方式による風力発電の導入に向けて、洋上風力発電を含む多くのプロジェクトが進められている。
シーメンスガメサは、このような事業の発展を背景に、後述するように、日本市場における陸上風力事業、洋上風力事業、サービス事業の日本現地化を促進している。
▼ 注3
苫前グリーンヒルウインドパーク:シーメンスは2004年にデンマークの風力発電メーカーBonus(ボーナス)を買収。Bonus(ボーナス)社が納入した風力発電所は、今日ではシーメンスガメサの実績としてカウントされている。