デジタルツインを核にシーメンスが産業界の脱炭素化を推進
シーメンス株式会社(以下、シーメンス)の代表取締役社長兼CEO 堀田 邦彦(ほりた くにひこ)氏は、「世の中は全体的に見ていくと、脱炭素、環境に対して継続的に成長ができるかどうかということが、経営指標として問われる時代になっています。ここにおいても、シーメンスは世界をリードし、ソリューションを提供していきたい」と、産業界の脱炭素化への同社の立ち位置を強調した。
図1に見られるように、産業界の脱炭素とサステナビリティは喫緊の課題である。ここでもシーメンスはデジタルツイン(DigitalTwin)の考え方を提唱し、リアルな世界とバーチャルな世界を結びつけることによって、エコな(省資源の)事業を実現していく。
図1 喫緊の課題である産業界の脱炭素とサステナビリティ
出所 2022年1月25日、シーメンス記者発表会資料より
「図2はその構成要素を示したもので、デジタルツインを中核として、AIとデータ分析をつなげ、生産の最適化、OT/ITの融合、サプライチェーンの連携、デジタルワーカー、プラグそして生産など、各分野において統合的に脱炭素を実現・支援していきたい」と、堀田氏は続けた。
図2 シーメンスが提唱するサステナブルなデジタルエンタープライズ
デジタルツイン:DigitalTwin。IoTなどでリアルタイムにリアル(物理)空間にある情報を取得し、そのデータをもとにサイバー空間でリアルを再現する技術。リアルとバーチャルなモデルが瓜二つであることから、「デジタル上の双子(ツイン)」と呼ばれる。
出所 2022年1月25日、シーメンス記者発表会資料より
9割のCO2排出量がサプライヤーからの排出
現在、エネルギー関連のCO2排出量を測定したり、CO2排出量の削減策を進めている企業が増えている。しかし、バリューチェーンの脱炭素化は、1企業だけでは乗り越えられない課題となっている。
シーメンス デジタルインダストリーズビジネスディベロプメント部長の鴫原 琢(しぎはら たく)氏は、「シーメンスのドイツのPLC注1生産工場で、PLC1台当たりのCO2排出量がどのくらいなのかを算出してみました。その結果、PLC1台当たりのCO2排出量を100とすると、実に90以上のCO2排出量は、シーメンスに納入いただいているサプライヤーからの合計の算出値であることがわかったのです」と述べた。
つまり、製品のCO2排出量の大部分を占めているのは、自社の製造工程ではなく上流のサプライチェーンで、各サプライヤーは、表1に示すスコープ3(Scope 3)の排出を行っている。そこで、サプライチェーン全体の透明性をもったデータを集めることが必要であり、かつ複数のサプライチェーンの各段階から、いかに正確にデータを積み上げていくかという必要性に達した。
表1 スコープの種類(スコープ1、2、3)とその内容
出所 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/supply_chain.html を参考に編集部で作成
▼ 注1
PLC:Programmable Logic Controller、機械を自動制御する装置。