フェーズ1:4分野の要素技術を開発
〔1〕次世代風車から洋上風力運転保守高度化まで
研究開発を推進ための具体策として、まず「洋上風力の産業競争力強化に向けた技術開発ロードマップ」注5に基づくサプライチェーン全体を、次に示す8分野に区分した。
【分野①】調査開発(風況観測・配置最適化等)
【分野②】風車(風車設計・ブレード・ナセル部品・タワー等)
【分野③】着床式基礎製造(モノパイル・ジャケット等)
【分野④】着床式設置(輸送・施工等)
【分野⑤】浮体式基礎製造(浮体・係留索・アンカー等)
【分野⑥】浮体式設置(輸送・施工等)
【分野⑦】電気システム(海底ケーブル・洋上変電所等)
【分野⑧】運転保守(O&M)
このうち、今回発表された「洋上風力発電の低コスト化」の対象として、【分野②】風車、【分野⑤】浮体式基礎製造、【分野⑥】浮体式設置、【分野⑦】電気システム、【分野⑧】運転保守、を重点化したうえで、フェーズ1として一部を統合(分野⑤と分野⑥)し、表2に示す4分野について要素技術の開発を進めていく。
さらに、2023年度以降にはフェーズ2として実証事業を実施し、早期のコスト低減を実現することによって、浮体式を中心とした洋上風力発電の導入拡大を目指す計画となっている。
〔2〕フェーズ1、2の予算総額は1,195億円
具体的にはフェーズ1として、表2に示す、
【フェーズ1-①】次世代風車
【フェーズ1-②】浮体式基礎製造・設置低コスト化
【フェーズ1-③】洋上風力関連電気システム
【フェーズ1-④】洋上風力運転保守高度化
の4分野を対象とした、18テーマの要素技術研究開発を、延べ42社で推進する。このプロジェクトの支援予算総額は、2023年度以降に実施するフェーズ2の実証研究予算と合わせて1,195億円であり、このうちフェーズ1は345億円である。
洋上風力関連の電気システム技術開発事業の例
〔1〕12社で協議会を設立
ここでは、前出の表2に示す【フェーズ1-③:洋上風力関連電気システム技術開発事業】についての概要を見てみる注6(誌面の関係から、ここではフェーズ1-③のみを紹介する)。
現状では日本の洋上風力関連産業は、まだ確立していないところもあり、先行する欧州などと比べて、洋上風力発電コストが高い。一方、前述したように、遠浅の海域が少ない日本では、欧州と異なり着床式よりも浮体式(図2を参照)の導入余地が大きいと見られている。そのため日本では、浮体式を中心とした洋上風力発電のコストの低減や大型化を行い、導入拡大を図る必要があると考えられている。
そこで、【フェーズ1-③:洋上風力関連電気システム技術開発事業】プロジェクトに参加する技術開発メーカーと電力会社の12社は、図3に示す協議会(幹事会社:東京電力リニューアブルパワー)を設立した。
図3 洋上風力関連電気システム技術開発事業の開発体制
出所 東京電力リニューアブルパワー、2022年1月21日プレスリリース、NEDO「グリーンイノベーション基金事業(洋上風力発電の低コスト化プロジェクト)」に採択
同協議会では、国内外の専門的な技術や知識を結集し、サプライチェーンとそれらの情報を共有することによって、サプライチェーンの形成を進めながら、将来の市場獲得に向けた次世代技術開発を戦略的に推進していく。
実施期間は2022年3月〜2025年3月の3カ年計画(支援予算:25億円、表2)の予定で、図4と表3に示す、高電圧ダイナミックケーブルから洋上変電所/変換所に至る、低コストな浮体式洋上風力発電システムにおける共通要素技術の開発を実施する。
図4 浮体式洋上風力発電システムの構成と事業で対象とする要素技術分野
[参考サイト]
出所 東京電力リニューアブルパワー、2022年1月21日プレスリリース、NEDO「グリーンイノベーション基金事業(洋上風力発電の低コスト化プロジェクト)」に採択
表3 図4中の要素技術の用語解説
出所 東京電力リニューアブルパワー、2022年1月21日プレスリリース、NEDO「グリーンイノベーション基金事業(洋上風力発電の低コスト化プロジェクト)」に採択
〔2〕浮体式関連のケーブルや変電所を開発
【フェーズ1-③:洋上風力関連電気システム技術開発事業】プロジェクトでは、図4に示す浮体式洋上風力発電システムにおいて、
- 共通課題となる高電圧ダイナミックケーブル(表3)
- 浮体式洋上変電所/変換所(表3)
などを対象に、機器本体のコストや設置・運用コストの低減を目標として取り組んでいく。
具体的には、技術開発メーカーは、将来の海外市場ニーズも見据えた技術開発を行い、一方、電力会社は、将来想定される浮体式洋上風力発電に必要な技術の観点から検討・評価し、社会実装を見据えた効率的な技術開発を実施していく。
上記のような取り組みを通して、設立した協議会では、日本における浮体式洋上風力発電の早期のコスト低減と導入拡大を目指して技術開発を推進し、2050年カーボンニュートラルの実現を目指す。
▼ 注5
NEDO/洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会、「洋上風力の産業競争力強化に向けた技術開発ロードマップ」、2021年4月1日