NEDOは、浮体式の洋上風力発電システムの低コスト化を図るべく、要素技術の開発に着手したと発表した。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2016年12月21日、浮体式の洋上風力発電システムの低コスト化を図るべく、要素技術の開発に着手したと発表した。2030年以降に浮体式洋上風力発電による発電コストを1kWh当たり20円とするための技術開発となる。
ちなみに、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が定める、洋上風力発電による電力の買取価格は2015年度で36円(税別)だ。ただしこれは、海底に着床した風力発電施設によるもの。浮体式洋上風力発電設備はまだ実用化に向けて、出力2MW~5MWの設備を設置して試験を実施している段階にある。
海底に着床させる既存の方式でなく、浮体式洋上風力発電設備の技術開発を進める理由は、日本周辺の海底の地形にある。着床式風力発電設備の設置に向く遠浅な部分が狭く、急峻なカーブを描いて深くなる地形になっている。そのため、海岸から沖に出て、水深が深いところにも浮体式の設備を利用して、風力発電設備を設置する必要があるのだ。
今回の開発事業では、設備のコストを低減するために3つの技術を取り入れた小型の試作機を作成する。1つ目の技術は、海底にワイヤーを垂らして1点で係留し、発電設備自体が風向の変化に応じて向きを変えるようにする技術。
図 今回の技術開発で試作する浮体式洋上風力発電設備のイメージ

出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
一般的な風力発電設備には、「風車ヨーシステム」という仕組みを備えている。これは、風向きに応じて風車の回転面の向きを変え、最適な角度で風を受けるようにする技術だ。これを、1点係留として、発電設備自体が風車の裏側から風を受けて、向きが変わるようにすれば、風車ヨーシステムが不要になり、設備の製造コストを削減でき、設備を軽量化できる。
2つ目は風車のブレードを2枚とし、台風などによる突風による荷重を軽減する技術だ。台風などによって風力発電設備が破損する例があるので、それに備えた技術だ。3つ目は本体を三角錐型とした上で、設備全体の軽量化を図る技術。
今回の事業では、以上の技術を取り入れて機器を設計し、検証用の小型モデルを作り、水槽で試験する。試験によってデータを蓄積、分析し、開発した技術を導入した設備の安全性、信頼性、事業として成立する可能性を評価する。
今回の事業は国立大学法人九州大学、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所、日本アエロダイン株式会社、株式会社富士ピー・エス、株式会社グローカルが委託を受けて実施する。期間は2016年度~2017年度。
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