「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトの背景
〔1〕再エネの主力電源化に向けた切り札
このグリーンイノベーション基金事業の背景には、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、再エネを最大限導入するという政府の「第6次エネルギー基本計画」(2021年10月22日)の中で、特に洋上風力発電は大量導入やコスト低減が可能な分野であるとともに、経済波及効果が期待されることから、再エネの主力電源化に向けた切り札として位置づけられたことが挙げられる。
これらを踏まえて、NEDOは、洋上風力発電の社会実装を進めるため、グリーンイノベーション基金事業の一環として経済産業省が策定した研究開発・社会実装計画に基づいて、「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクトの公募を2021年10月1日〜2021年11月15日に行い、表2に示す4分野計18テーマを、2022年1月21日に採択した。
表2 「洋上風力発電の低コスト化」プロジェクト(4分野、18テーマ、延べ42社)
※ 2022年1月21日時点の支援予算は19億円であるが、今後の事業展開も含めて、最大70憶円の支援予算が組まれている。
出所 NEDO「グリーンイノベーション基金事業/洋上風力発電の低コスト化」プロジェクト実施予定先、2022年1月21日
〔2〕なぜ浮体式洋上風力発電なのか
洋上風力の導入・普及では、欧州が先行している。しかし欧州では、図2に示すように、水深の浅い海域(水深50m程度)において、洋上風力の風車の支柱(基礎)を直接海底に固定して建設する着床方式が主流となっており、洋上風力発電を海に浮かべてアンカー(固定装置)で繋ぎ止めて建設する浮体式は、現在はまだ開発途上にある。
図2 洋上風力発電の着床式と浮体式の違い
出所 NEDO「TSC Foresight」、Vol.27(2018年7月号)をもとに一部修正して編集部で作成
このような背景もあって、遠浅(水深50m程度まで)の海が少ない日本では、水深50m以上の海域で発電に適した「浮体式洋上風力発電」(図2右)の導入を拡大できる可能性が大きい。このため、今回のプロジェクトでは浮体式洋上風力に注力して研究開発する計画となった。