日本には世界市場をリードできる可能性がある
現在、洋上風力発電の世界動向を見ると、発電システムの大型化が進展する中で稼働率の向上やコスト低減が進み、これに伴って再エネの電気料金も急速に低下している。
また、米国のGEリニューアブルエナジーやデンマークのヴェスタス(Vestas)、スペインを本拠地とするシーメンスガメサリニューアブルエナジー(SGRE)などの風力関連ベンダは、相次いで、定格出力15MWクラス級の大容量な風車を発表している(本誌2021年11月号参照)。
このため、風車の定格出力は2030年までに15〜20MWクラスまで大型化していくと見られており、さらに風車のローター(回転羽根)の直径は250mにも達すると予測されている注7。
しかし、アジアにおける日本の立地条件は、台風や地震、落雷が多く、さらに低風速であることなどの自然環境を考慮すると、欧州などで稼働している風車の設計のまま単にサイズを大きくするだけでは、日本の風力発電システムとして最適なものにならない可能性もある。
一方で日本には、これまでの陸上風力の経験から、
- 風力によるローターの回転エネルギーを電気エネルギーに変換する「発電機」、
- ローターの回転数を発電機に必要な回転数に増速するギア(歯車)装置(増速機)、
- 機械的なギアを用いないエレクトロニクス技術を駆使した最新のダイレクトドライブ(直接駆動)装置、
などのような、部品メーカーの潜在的な「ものづくりの基盤」があり、これらによって、世界の動向をキャッチアップできる多様な技術が存在している。そのため、今後、日本の取り組み方によっては、浮体式洋上風力発電分野で世界市場をリードできる可能性があり、今回のプロジェクトへの期待は大きい。
▼ 注7
NEDO/洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会、「洋上風力の産業競争力強化に向けた技術開発ロードマップ」、2021年4月1日