[クローズアップ]

3.16福島県沖地震&天気予報悪化の下、なぜ東京エリアで大規模停電を防げたのか

― 日本初の「需給ひっ迫警報」を発令 ―
2022/05/06
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

災害に強いレジリアンスな電力システムへの期待

〔1〕悪天候で太陽光発電は10%しか発電できなかった

 以上、2022年3月16日に発生した福島沖地震に端を発し、その後悪化する天気予報に緊急対応し、電力需給ひっ迫とブラックアウトを回避した取り組みについて、東京エリアを中心に外観した。

 現在、第6次エネルギー基本計画で打ち出された「再エネの主力電源への取組」が推進されているが、今回の電力ひっ迫時に、厳気象(雪模様で寒く太陽も出ていない悪天候)であったこともあり、太陽光発電は表7に示すように、東京電力管内の太陽光発電設備容量1,777万kWのうち、わずか10%(1/10)の175万kWhしか発電していなかったことも報告され、今後の課題となった。

表7 東京電力管内の太陽光発電量の実績(2022年3月22日および3月23日)【※2022年1月時点の太陽光発電設備容量:1,777万kW】

表7 東京電力管内の太陽光発電量の実績(2022年3月22日および3月23日)【※2022年1月時点の太陽光発電設備容量:1,777万kW】

出所 資源エネルギー庁「2022年3月の東日本における電力需給ひっ迫に係る検証について」、第46回電力・ガス基本政策小委員会、資料3-1、2022年3月25日、34ページをベースに編集部で作成

〔2〕連系線による電力融通は60万kW分

 一方、今回のブラックアウトの発生を食い止めた、地域間連系線の活用を見てみよう。

 現在、図2(1)に示す、各エリア間での電力融通に利用される地域間連系線(一種の送電線)は、原則としてすべての連系線容量をスポット市場(通常、卸電力取引所で行われる電力取引)などで割り当てられている。このため、需給ひっ迫などがある場合には、残りの連系線容量を広域機関による融通指示によって利用する運用になっている。

図2 地域間連系線(東日本:50Hz/西日本:60Hz)の現状と増強計画(東日本のみ)

図2 地域間連系線(東日本:50Hz/西日本:60Hz)の現状と増強計画(東日本のみ)

出所 資源エネルギー庁「2022年3月の東日本における電力需給ひっ迫に係る検証について」、第46回電力・ガス基本政策小委員会、資料3-1、2022年3月25日

 今回の需給ひっ迫時には、定期点検中であった30万kWを除く180万kWを最大限利用して、西(中部エリア)から東(東電エリア)へ、周波数変換設備(60Hz⇒50Hz変換)を経由して送電された。具体的には、図2(2)に示すように、3月22日当日は、スポット市場の取引など向けに120万kW分が割り当てられて送電されており、緊急時用の60万kW分の連系線によって、電力融通が行われた。しかし、2011年3月11日の「東日本大震災」や2018年9月6日の「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」の後にも指摘されていた、連系線の送電容量の不足が今回も課題として挙げられた。

 現在、地域間連系線については電力システムのレジリエンス強化に向けて、全国的に増強が計画されている。例えば、東日本エリア(50Hzエリア)では、当面、2027年度中を目指して、図2(1)右部に示すように、北海道―東北―東京―中部エリアで増強計画が推進されている。

 今後、日本では、再エネの主力電源の1つとして大容量の洋上風力発電なども推進されていることもあり、連系線の増強はますます重要になってきている。

〔3〕求められる災害に強いレジリエンスな電力システムへの改革

 現在、政府の電力・ガス基本政策小委員会では、今回の電力需給ひっ迫に関する検証と課題について、本格的な検討が開始されたところだ。

 これらの検討を通して、再エネ主力電源時代の電力需給検証の方法や、電力供給力確保の方法、さらに強力な連系線等を含む電力網の整備などが検討され、災害に強いレジリエンスな電力システムへの改革が求められる。

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