テスラの蓄電池の導入とマイクログリッドへの展開
〔1〕10.8%の効果と電力需給ひっ迫時にも活躍
白井DCCでは、再エネ利用を想定して、蓄電設備の技術的な検証や知見を溜めるため、エネルギーマネージメント機能をもつ、米国テスラの産業用のリチウムイオン蓄電池「Powerpack」を電力ピークカット向けに導入し、2019年11月から稼働している(図10)。
図10 白井DCCに設置された蓄電池とエネルギー利用効率化の取り組み
出所 IIJ「カーボンニュートラルデータセンター実現への取り組み」、2022年7月28日
久保氏は、「蓄電池は、停電時のバックアップ機能だけでなく、電力のピークカットにも効果があります。図10(2)に示すように、1日(0時〜24時)のうち、特に夏場の空調は昼間たくさん電力を使うので、電力は夏場の昼間にピークがあります。そこで、蓄電池に夜貯めた電気を昼間のピーク時に放電してピークカットすると、電気の基本料金の契約単位(契約アンペア数)が減るので、基本料金が安くなります。実際、2020年の夏季のピーク日に外気冷却空調の課題となっていた夏場のピーク電力を、データセンター全体の需要に対して10.8%ピークカットの効果がありました」と蓄電池の効果を述べた。
さらに、(1)2022年3月の「3.16福島県沖地震」による火力発電所停止と、その直後の厳寒による気温低下での暖房需要の急増時と、(2)2022年6月25日〜30日の6日間、連日、最高気温が35℃を超える記録的な猛暑による冷房需要の急増時に、東京電力から節電要請がきたが、その際には、蓄電池から放電して同データセンター内の電力需要を抑えることができたという。
久保氏は、「蓄電池の役割が広がってきていますので、今後、蓄電池を幅広く活用していきたい」と語った。
〔2〕地産地消のマイクログリッドを構築へ
IIJは、蓄電池の活用について、次のようなロードマップを発表している。
- 2023年度に、ピークカットやピークシフト、節電要請時の需給調整、さらに容量市場へ参画する(2024年度から実需給)注13、注14。これに加えて、オフサイトの再エネ発電設備からの電力を蓄電し、カーボンニュートラルを促進する。
- 松江DCPの新設のサーバ棟が、総務省の「デジタルインフラ強靱化事業」(前出)に採択された(2022年6月27日)ところから、2024年には松江DCPが立地しているソフトビジネスパーク島根(工業団地)に、パーク内で地産地消するマイクログリッド(図11)を構築し、地域のレジリエンスの強化やカーボンニュートラルの実現を目指す。
図11 IIJの松江DCPにおけるマイクログリッド構想
出所 IIJ「カーボンニュートラルデータセンター実現への取り組み」、2022年7月28日
「超巨大デジタル複合データセンター」を目指す!
久保氏は、巨大化し階層化するデータセンターの今後について、「データセンターを1カ所だけで(単体で)運用していくのではなく、全国に散在する複数のデータセンターを接続し、あたかも1つの巨大なデータセンターであるかのような『ハイパースケールデジタルコンプレックス(超巨大デジタル複合施設)』を目指していきたいですね。今後、例えば、白井DCCの1期棟と松江DCPを連動させる、さらに白井DCCの2期棟とも連動させていきたい」と次への夢を語った。
▼ 注13
IIJプレスリリース、「白井データセンターキャンパスの蓄電池およびオンサイト太陽光発電を活用したデマンドレスポンス(DR)によるデータセンター運用コスト低減の効果実証を開始」、2022年7月28日
▼ 注14
容量市場:“将来の供給力(kW)”を取引する市場。将来必要な供給力をあらかじめ確保することで電力の安定供給を実現するもの。