データセンターの空調方式とPUE
写真2 白井データセンターキャンパス(DCC)のサーバ室
出所 IIJ提供
〔1〕直接外気冷却方式でPUE1.2を目指す
データセンターのPUE(電力使用効率)に大きな影響を与える空調方式は、運用上重要なポイントである。白井DCCにはどのような工夫が凝らされているのだろうか。
白井DCCは、煙突型大規模データセンターのイメージを原型(システムモジュールと一体化した直接外気冷却方式)とした空調方式となっている(図4)。また、空調設備は、消費電力を削減する「外気冷却空調方式」、および効率的に空調搬送できる「壁吹き出し空調」を採用している。
図5に、具体的な白井DCCのサーバ棟の断面図を示す。これは松江DCPと同様の直接外気冷却方式である。図5右側の屋根が少し突出している個所から外気を取り入れ、そのままサーバ室(写真2)に送る(給気温度24℃、コールドエリア)。サーバ室で温まった空気(還気温度34℃、ホットエリア)は、図5左上部から外へ排気される。
図4 煙突型大規模データセンターのイメージ(千葉県白井DCCの原型):システムモジュールと一体化した直接外気冷却方式
出所 IIJ、「Internet Infrastructure Review(IIR)Vol.53」、2021年12月24日発行
図5 サーバ棟の断面図:省エネと信頼性の向上を実現する直接外気冷却方式の仕組み(図4をもとに実現)
出所 IIJ「カーボンニュートラルデータセンター実現への取り組み」、2022年7月28日
「これらの一連の流れの制御はAIで自動的に行っています。ラックあたり最大20kVAクラス(平均6kVA/ラック)の冷却に対応して、この直接外気冷却方式の導入によって、設計値のPUEは、松江DCPのPUE1.2と同じく、業界トップクラスの実現を目指して設計しています」(久保氏)。
〔2〕PUEを下げることの重要性
ここで、前述した省エネ法でPUE値を下げることが、データセンターのカーボンニュートラルに貢献するだけでなく、ランニングコストの削減にもどのくらい影響を与えるかについて、見てみよう(省エネ法の改正では、PUE1.4以下にするよう定められた)。
図6に示すように、従来型データセンターの場合はほぼPUE2.0である。このPUE2.0と、図6右の省エネ型データセンターのPUE1.2(IIJの松江DCPの場合)を、電気代で比較してみると、PUE1.2の場合はPUE2.0に比べ、空調などの省エネ化によって、電力量が40%も削減される〔試算条件:250ラック(ラックあたり4kW)のデータセンターを想定。電気代は15円/kWh〕。
図6 PUE1.2はPUE2に比べて年間約1億円を削減
出所 IIJ「カーボンニュートラルデータセンター実現への取り組み」、2022年7月28日
すなわち、PUE2.0のデータセンターの電気代は約2億6,280万円となり、PUE1.2では40%減の約1億5,768万円となる。この結果、年間約1億円もの電気代が削減できることになる(図6)。
このように、PUEを改善することで経済的にも大きな効果が見込めるのだ。