取引先のCO2削減を支援し、自社の削減も
サプライチェーンのCO2排出削減で、ユニークな取り組みが展開されている。株式会社山善(本社大阪市、以下、山善)がDaigasエナジー株式会社(本社大阪市、以下、Daigasエナジー)と共同で展開しているコーポレートPPA注1事業「DayZpower(デイズパワー)」だ。
このDayZpowerが2024年3月26日、新たな提供先としてトーヨーコーケン株式会社(本社東京都、以下、トーヨーコーケン)と契約を締結したが、山善の本業は流通商社であり、トーヨーコーケンは商品仕入先の1社。今回の契約によって、山善側は自社サプライチェーンのスコープ3注2「原材料(仕入商品)」のCO2排出量の削減となり、一方のトーヨーコーケン側では下流のスコープ3のCO2排出量の削減となる。両社のサプライチェーンにメリットが得られ、これを山善では「連鎖効果」としている(図)。
Daigasエナジーと山善によるコーポレートPPA事業
山善は、生産財や消費財の商社として事業を展開しているが、脱炭素化に独自のビジョンを掲げ関連ビジネスにも注力している。その一環として、大阪ガス株式会社の100%子会社であるDaigasエナジーと基本業務提携契約を結び、2021年10月から両社でDayZpowerの事業を展開している。山善が自社の顧客や取引先を中心に提案活動を行い、Daigasエナジーは太陽光発電システムのエンジニアリング(設計・建設・施行)や維持管理等を担当している。
DayZpower事業は、山善の仕入先メーカーやその工場を主なターゲットとしたものだが、同時に山善自身のGHG(温室効果ガス)排出削減も企図している。2023年2月には機器メーカーである「株式会社 をくだ屋技研」(大阪府堺市)ともDayZpowerの契約を結んでいる。流通商社である山善はスコープ3の排出量が最も多いことから、今後も仕入先企業を中心にDayZpowerの導入企業を増やしたい考えだ。
発電能力の増強、グループ会社への電力託送、買い取りなども
トーヨーコーケンはウインチ(巻き揚げ機)などの機械器具メーカー。今回のコーポレートPPA契約は、2024年4月から20年間、同社の山梨事業所に太陽光パネルを設置し、年間約15万kWhの発電量によって年間約64トンのCO2排出削減を見込む。
この案件は、太陽光パネルの設置スペースに余剰があるため、Daigasエナジーと山善は将来的に発電能力を増強し、送電網を介した同社グループ会社への託送(送電するために一般送配電事業者に業務を委託すること)や、Daigasグループによる電気買い取りなども想定している。
図 山善とトーヨーコーケンのサプライチェーン(スコープ 3)の関連
出所 株式会社山善 プレスリリース、「トーヨーコーケン株式会社 山梨事業所で 「DayZpower」を採用」
注1:PPA:Power Purchase Agreement、電力販売契約。需要家と発電事業者の間で長期間の電力買取契約を結ぶこと。新規の再エネ発電所の開発を進めることをコーポレートPPAと呼ぶ。
注2:スコープ3:事業者によるGHG(温室効果ガス)排出量の算定・報告対象範囲の国際的な区分。自社の事業活動における直接的なGHG排出をスコープ1、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用により発生する間接的なGHG排出をスコープ2、それ以外の事業活動に関わるサプライチェーンのGHG排出をスコープ3と規定している。
参考サイト
Daigasエナジー株式会社発表プレスリリース
トーヨーコーケン株式会社山梨事業所におけるオンサイトPPAサービスの開始
株式会社山善 プレスリリース
トーヨーコーケン株式会社 山梨事業所で 「DayZpower」を採用
をくだ屋技研 本社工場 で、DayZpower(デイズパワー)採用
大阪ガス株式会社 プレスリリース
自家消費型太陽光発電サービスにおける株式会社山善との業務提携について~共同ブランド「DayZpower」を立ち上げ、サービスを拡大~