[標準化動向]

802.16(BWA)の標準化動向(1):WiMAX(802.16e)のマルチホップ中継を目指す新TG「802.16j」設立

=議長に、日本の野原氏が就任=
2006/07/17
(月)
SmartGridニューズレター編集部

TGj(中継タスク・グループ)

中継タスク・グループ、TGj (P802.16j)は、IEEE 802.16標準に準拠したシステムのマルチ(複数)中継の運用を可能とするために、OFDMA PHYおよびMACを拡張することを目的として、タスク・グループとしての組織化が行われ、2006年5月にイスラエル・テルアビブで最初のTG会合が開催された(OFDMA:Orthogonal Frequency Division Multiple Access、直交周波数分割多元接続)。

マルチホップ中継(MMR:Mobile Multi-hop Relay)は、日本からの提案によってSG(Study Group) が組織された技術です。IEEE 802.16e-2005システムの基地局(BS:Base Station)と端末(SS:Subscriber Station)の間に中継装置(RS:Relay Station)を設定し、OFDMA PHYのフレーム構成を維持した状態で中継を実現する技術で、基地局までのバックホール回線(基地局からコアネットワークまでの伝送路)が確保できないエリア(地域)への展開を容易とする他、都市部ではビル陰や地下街など、基地局の電波が直接到達しないエリアの品質改善に効果的な技術である(図3)。

図3
図3 802.16jで標準化を目指すマルチホップ中継 (クリックで拡大)

IEEE 802.16e-2005標準化が完了した現在、中継タスク・グループ(Relay Task Group)は、IEEE 802.16標準化の中で最も注目を集めているタスク・グループで、P802.16jの議長には、日本の野原光夫氏(KDDI)が就任している。IEEE802標準化のタスク・グループにおいて、日本人が議長に就任することは極めて稀なことでもあり、今後の標準化活動に非常に注目されるところである。
標準化スケジュールは、2006年11月に投票(Letter ballot)、2007年3月にはスポンサー投票(Sponsor ballot)を経て、2007年9月に標準の制定を目指している。

メンテナンス・タスク・グループ(Maintenance Task Group)

メンテナンスTGは、IEEE 802.16-2004標準制定後に、同標準に含まれる誤りなどの修正を目的として構成されたタスク・グループで、2006年2月にIEEE 802.16-2004/Cor1として修正版の標準ドキュメントを制定して、いったんその役割を終えている。現在は、IEEE 802.16e-2005標準を含めた修正の要望を募集している状況である。

IEEE 802.16とWiMAXフォーラムの関係

以上、IEEE 802.16シリーズの標準化の状況に関して説明してきた。一方、IEEE 802が802.16として標準化した無線インタフェースのPHY、MAC層の規定に準拠する機器の互換性と相互接続性を保証することを目的に、2001年6月に通信機器メーカー、半導体、高周波部品やアンテナなどのメーカーを中心に、WiMAXフォーラム (非営利団体)を設立した (図4)。

図4
図4 802.16標準とWiMAXフォーラムの関係 (クリックで拡大)

このWiMAXフォーラムでは、IEEE 802.16標準(フル規格)に含まれる多くのオプション項目から、通信機器に実装するための共通仕様(プロファイル:Profile)を策定(フル規格から必要な規格を切り出し、一部追加して策定)し、また策定したプロファイルに準じて製造された通信機器の相互接続性に関する認証(Certify)などの活動を行っている。これによって、EEE802.16標準に準拠して製造された通信機器の互換性や相互接続性の確保を図り、世界で共通して利用可能な通信装置の実現を推進している。

WiMAXフォーラムの認証試験(Conformance Test)を通過した無線通信機器には、WiMAX準拠の認証が与えられ、WiMAXのロゴマークの表示が認められる。

現在、WiMAXフォーラムでは2005年7月にIEEE 802.16-2004標準に準拠した「固定WIMAX」関連機器の相互運用性に関する認証業務が開始されており、この認証を得た機器が市場に出荷されている状況にある。今後は、IEEE 802.16e-2005標準に準拠した機器のプロファイルの策定および認証業務が行われ、「モバイルWiMAX」としての認証機器が市場に投入される予定である。

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