地域の小規模再エネ活用促進、レジリエンス強化なども視野に
エネルギーの地産地消化が進む中、新たな電力流通モデル「Internet of Gridプラットフォーム(以下、IoGプラットフォーム)がNTTアノードエナジー株式会社(以下、NTTアノードエナジー)ほか7社注1から発表された(9月20日)。
「Internet of Grid(IoG)プラットフォーム」のネーミングの通り、インターネットと蓄電池を組み合わせて、各家庭単位の電力使用状況の精細な把握と制御を実現(図1)、これによって地域の小規模な再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入促進を図るほか、地域のレジリエンス強化(災害時における復興力の強化)や新たなサービス創出なども目指す。
図1 IoGプラットフォームの概念図
出所 NTTアノードエナジー株式会社 ニュースリリース 2024年9月20日、『エネルギーグリーン化のための新たな電力流通モデル「Internet of Grid プラットフォーム」を開発』
地域の再エネ接続を促進するIoGプラットフォーム
現在、各家庭や地域の太陽光発電や風力発電などの再エネ電力を、そのまま地域の配電系統に接続するには制限が伴う。そもそも地域の電力系統には、電力使用量や太陽光パネルなどからの発電量など、電力系統の潮流(電気の流れ)注2を把握する仕組みがない。また電力流通設備の容量は消費地に近くなるほど小さくなっているため、停電などの事故の発生を防止するために、むやみに再エネ発電を接続して電圧や電流を増加させるわけにはいかない。
そのため、地域での再エネ発電が接続しにくいだけでなく、接続しても再エネ発電量が増えた場合の対応は発電量を抑制する(制限する)しか対応策がないなど、せっかくの再エネが十分に活用されないという状況があった(図2)。
図2 従前の電力流通インフラの課題
出所 NTTアノードエナジー株式会社 ニュースリリース 2024年9月20日、『エネルギーグリーン化のための新たな電力流通モデル「Internet of Grid プラットフォーム」を開発』
今回開発されたIoGプラットフォームでは、これらの課題にインターネットから収集した電力データと蓄電池を活用して対応する。そのために、インターネットとの通信用に新機能を追加したスマートメーターも開発している。この新スマートメーターによって、電力潮流を家庭ごとに把握。把握した電力データをもとに、例えば再エネ発電量が増え設備の許容値を超えると判断されたとき、自動的にIoGプラットフォーム内に設置された蓄電池に送電し、設備全体の保全とともに充電を行う。
また、蓄電池は停電などの非常時に再エネ発電と組み合わせてマイクログリッド注3として活用するほか、余剰分の電力を市場取引で売買し収益化することも視野に入れている。
実証のほか、新サービスの開発や展開も
「IoGプラットフォーム」の実証は、岐阜県加茂郡八百津町で2024年9月から進められている(図3、表1)。同町の施設および蓄電池を設置したNTT施設敷地内に新スマートメーターを設置し、そこで計測した電圧などの潮流データについて、同プラットフォームの「潮流マネジメントシステム」で把握・管理し、電圧上昇の状況に応じた蓄電池制御によって潮流を適正化する。
またNTTアノードエナジーでは、IoGプラットフォームをHEMS(Home Energy Management System、家庭用エネルギー管理システム)に活用する取り組みを進めているほか、電力使用の可視化や水道・ガスの共同検針ヘの応用、さらに防災情報等の自治体サービスとの連携なども計画。新たな電力流通プラットフォームとしての存在感や価値を高めていく考えだ。
図3 岐阜県加茂郡八百津町での蓄電池制御の実証(電力系統対策としての蓄電池制御)
出所 NTTアノードエナジー株式会社 ニュースリリース 2024年9月20日、『エネルギーグリーン化のための新たな電力流通モデル「Internet of Grid プラットフォーム」を開発』
表1 図3に示す蓄電池制御の実証における各システムの機能概要と担当会社
HES:Head End System、スマートメーターやコンセントレータ(集約装置)の通信制御を行うシステム
MDMS:Meter Data Management System、電力会社(一般送配電事業者)側に設置されるサーバ。スマートメーターが顧客から収集した電力データ等を保管・分析したり、スマートメーターへの遠隔負荷開閉の指示等を行ったりするサーバシステム
CIS:Customer Information System、電力販売における顧客情報の一元管理システム
出所 NTTアノードエナジー株式会社 ニュースリリース 2024年9月20日、『エネルギーグリーン化のための新たな電力流通モデル「Internet of Grid プラットフォーム」を開発』をもとに一部加筆修正して掲載
注1:大崎電気工業株式会社、日本電気株式会社(NEC)、NTTテクノクロス株式会社、三菱電機株式会社、株式会社NTTデータ東北、NTTテレコン株式会社、株式会社ACCESSの7社。
注2:電力系統の潮流:電力会社の火力発電所などから送電網(電気系統)を通って、工場や家庭などの利用者へ流れる電力を「潮流(順潮流)」(順潮流:電力会社➡家庭の流れ)と呼ぶ。逆に、家庭などの太陽光発電所で発電した電力を電力会社などに売電する場合を「逆潮流」(家庭➡電力会社の流れ)と呼ぶ。
注3:マイクログリッド:Microgrid、小規模電力網。平常時には再エネを効率よく利用し、非常時には送配電網から独立して、地域内で電力エネルギーの自給自足を行う送配電の仕組み。
参考サイト
NTTアノードエナジー株式会社 ニュースリリース 2024年9月20日 『エネルギーグリーン化のための新たな電力流通モデル「Internet of Grid プラットフォーム」を開発』