[特別レポート]

5G SAで「ネットワークスライシング」の商用展開始まる!

―2027年に5Gユーザー数が主流へ、そして6Gへ―
2025/03/31
(月)
フリーライター 篠田 哲/インプレスSmartGridニューズレター編集部

[5G SAの最新トピックス]

 今後、5G SAによってどのようなサービスの提供が可能となるのか。ここでは世界で注目されている最新事例を挙げる。

米国T-Mobileの「ネットワークスライシング」のユースケース(事例)

 米国では5G SAやミッドバンド化が進んでおり、その充実した基盤をもとに新たなサービスは開始されている。その1つとして、米国T-Mobileが開発を進めている事例が紹介された。
 具体的には、5G SAのネットワークスライシング注6機能を目的やニーズに合わせて商用展開しているサービスで、主なスライスの利用例として次の4つを示した(図11)。

(1)特別イベント用スライス
 多くの観衆が集まるイベント会場において、電子チケットの発行管理や物販販売における決済用にネットワークをスライスし利用する。イベント会場においてチケット発行や決済業務は機会損失のリスクをはじめ、ユーザー体感や満足感に大きく影響するため、それらデータをスライシングにより優先的に処理する。

(2)救急や消防といったファーストレスポンダー注7用スライス
 専用の物理ネットワークではなく、5G公衆網の一部をスライスして提供するもの。すでに台湾で緊急車両の配備用に稼働しているものがある。

(3)ビデオ通信用スライス
 複数のカメラで撮影する際、カメラと収録機器をケーブルで結ぶが、これは操作が悪くコストがかかるためスライシングした5G回線を使う。カメラ数に合わせてスライシングすることで複数カメラによる撮影にも対応できる。それによって撮影の自由度を高め、コストダウンが可能になる。今後、こうした撮影ニーズが増えると予想され需要が見込める。

(4)セキュリティ強化レイヤー用スライス
 現在、ネットワーク機能とセキュリティ機能を統合し、クラウド型で提供するSASE(サッシー)注8などの提供が進んでいるが、それにあたって、従来の有線回線ではなくスライシングされた5G回線を活用する。同時に、より高いセキュリティも確保する。

 これらのサービス提供にあたって、ローカル5Gなどの専用インフラを整備する必要がない。また、5Gの広域ネットワークの有効活用も可能だ。通信事業者にとっては、ネットワークのコネクティビティをそのままサービスとして提供できるため、マネタイズの幅が広がる。
 ただしサービス提供にあたっては、まず5G SAの構築が進んでいること。そしてミッドバンド展開が進み、かつローバンドでカバレッジもサポートできるなどネットワークの“基本骨格”が整っていることが前提になるなど、鹿島氏は注意点を挙げている。

図11 米国 T-Mobileのスライスユースケース

出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年11月版記者説明会」より

5G SAによるフィンランドのプレミアムFWAサービス

 フィンランドの通信事業者「Elisa」(エリサ)では、2つのFWAサービスを展開している。1つは5G SAによる一般的なFWAサービスだが、もう1つはネットワークスライシングによって、帯域幅と遅延が保証された専用レーンによるプレミアムサービスだ。これによって、夕方のピーク時でも快適で信頼性の高いブロードバンド接続を提供している。一般的なFWAサービスに比べて高品質なサービスの提供となるため、顧客満足度と収益性の向上を果たしている。
 Elisaの仕組みは、図12に示すように、FWAパーティションと、デフォルトパーティションに分かれている。それぞれのパーティション(分割した空間)でデータ交信を行うが、交信量が変化してパフォーマンスに影響が出そうな場合にはソフトウェアで適宜コントロールし、一定レベルの通信量とスピードを維持する。このように、5Gコアネットワークから各スライスまで全体的に統合して管理・運用する手法が、5G SAの時代は一般的になってくる。

図12  フィンランドのElisaのOwn Lane 5G FWAサービス

出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年11月版記者説明会」より


注6:ネットワークスライシング:Network Slicing。1つの5Gの物理ネットワークを、複数の論理ネットワークに分離(スライス)して提供するサービス。例えば音声サービススライイス、映像通信スライス、工場間通信スライスなどがある。
注7:ファーストレスポンダー:First Responder。緊急時の救急隊や消防隊などが現場に到着する前に、現場に駆け付けて対応する人達のこと。
注8:SASE:Secure Access Service Edge、セキュア・アクセス・サービス・エッジ。米ガートナー社が2019年に提唱したセキュリティフレームワーク。IT環境で、ユーザーが直接クラウドにセキュアにアクセスできるようにするためのクラウドネイティブな仕組み。

参考サイト

「エリクソンモビリティレポート」、2024年11月日本語版

エリクソン Press release、2024年12月19日、
「エリクソンモビリティレポート: 5G SAは2030年末までに世界の5G契約数の約60%を占める」

Ericsson Blog、「RedCap and eRedCap – standardizing simplified 5G devices for the Internet of Things」、2024年12月19日

「エリクソンモビリティレポート」、2024年6月日本語版

エリクソン Press release、2024年7月25日、
「エリクソンモビリティレポート: 北米とインドがけん引する5Gミッドバンド展開、スタンドアローン活用も拡大」

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