24/7カーボンフリー電力」の供給に向け実証開始
株式会社まち未来製作所(以下、まち未来製作所)は、再生可能エネルギーで発電した電力の供給状況を、第三者であるアグリゲーター注1がリアルタイムで監視・検証する実証実験を開始した。発電時にCO2を排出しない電力を1日24時間・週7日間常に供給する「24/7カーボンフリー電力」の供給体制を構築するのが狙い。国内初の取り組みだという。国際的な再生可能エネルギー証書である「I-REC」を活用し、電力の調達元や時間を追跡する透明性の高い仕組みの構築を進める。2025年9月4日に発表した。
図1 「24/7カーボンフリー電力」の課題と、まち未来製作所の実証における供給・検証モデルの概要
出所 株式会社まち未来製作所 プレスリリース 2025年9月4日、「まち未来製作所、アグリゲーターとして国内初!24/7カーボンフリー電力のトラッキング実証を開始」
国際認証「I-REC」を活用しトレーサビリティの仕組みを構築
今回の実証実験では、アグリゲーターが主体となり、需要と供給のデータ統合、タイムスタンプの整備、第三者認証による透明性確保という3つについて検証する。
データ統合については、第三者であるアグリゲーターの立場で、電力データ管理協会が保有する需要側、同社が保有する再生可能エネルギー発電所の供給側という2つのデータを統合する基盤を構築する。これにより、小売電気事業者自身が販売する電力の環境価値を証明するという、ガバナンス上の課題を克服する。従来は、リアルタイムの需給データは電力供給の契約当事者である小売電気事業者しか扱えなかった。そのため、発電事業者が需給データを取得するには、小売電気事業者にもなる必要があり、利益相反が生じていた。
タイムスタンプの整備については、細かな発電時間の情報を持たない国内の「トラッキング付き非化石証書」を補うため、30分単位のタイムスタンプが付与されているI-RECを併用する。2つの証書を紐づけて運用するシステムを検証し、電力の時間的・地理的属性を明確にしながらリアルタイムでの供給状況を可視化する。
透明性確保については、第三者機関が検証・管理するI-RECの仕組みを活用する。発電所情報や発電実績を第三者である認定発行者(Issuer)が検証し、Evident社が提供する国際的な認証基盤上で証書を発行・管理する。独立した機関による運営と、発電と使用の対応関係を厳格に記録・追跡することで、環境価値の二重計上(ダブルカウント)といった不正リスクを回避するという。
まち未来製作所によれば、24/7カーボンフリー電力を供給する上では、需給バランスの調整や、1時間単位・発電元単位で電力の追跡や証明を可能にする制度やインフラの整備といった課題がある。
注1:アグリゲーター:電力の需要家や分散型電源を束ね(アグリゲーション)、電力の需給バランス調整や取引を行う事業者。需要と供給を仲介する役割を担う。
参考サイト
株式会社まち未来製作所 プレスリリース 2025年9月4日、「まち未来製作所、アグリゲーターとして国内初!24/7カーボンフリー電力のトラッキング実証を開始」