日本最大16MWのグリーン水素製造設備を使用した実証
サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリーHD)は、山梨県および9社と共同で、再生可能エネルギー(以下、再エネ)由来の電力を活用して水素(グリーン水素)を製造・利用する実証を、2025年10月11日にサントリー天然水 南アルプス白州工場とサントリー白州蒸溜所で開始した。工場の製造工程で用いる熱源の一部を化石燃料からグリーン水素に転換する。グリーン水素製造設備の能力は16MWで日本最大だという。同日に発表した。
年1万6000トンのCO2削減へ
今回の実証は、NEDOのグリーンイノベーション基金事業「大規模P2Gシステムによるエネルギー需要転換・利用技術開発」の助成を受けて実施する。技術開発のため、サントリーHDを含め、東レ株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社、カナデビア株式会社、シーメンス・エナジー株式会社、株式会社加地テック、三浦工業株式会社、ニチコン株式会社、株式会社やまなしハイドロジェンカンパニー(YHC)の10社が参画する。
使用する水素製造設備のPower to Gas(P2G)注1システムは、固体高分子(PEM)注2形水電解によってグリーン水素を製造する。製造能力が16MWで、24時間365日の稼働を想定した場合、年間で約2200トンの水素を製造できる。これにより約1万6000トンのCO2排出量削減を見込む。
製造したグリーン水素は、主にサントリー天然水 南アルプス白州工場内で利用する。実証のために開発した高効率かつ低NOx(窒素酸化物)の水素ボイラを導入し、工場で製品製造に用いる熱源の一部を従来の化石燃料(天然ガス)から水素へと転換する計画である。
実証の期間は2026年末までの予定で、再エネ由来の電力調達から、P2Gシステムによるグリーン水素の製造、そして水素ボイラによる蒸気製造に至る一連のシステムを技術的に検証する。
サントリーHDらは、今回の実証地を「グリーン水素パーク -白州-」と命名した。白州の地が将来的にグリーン水素の供給ハブとして認知されることを目指す。将来的に、実証で得られた知見や技術をもとに再エネの大量導入が見込まれる他の地域や様々な事業拠点にシステムを展開する方針だ。
注1:P2G(Power to Gas):再生可能エネルギー由来の電力を活用し、水を電気分解して水素などの気体エネルギーに変換・貯蔵する技術。
注2:PEM(Proton Exchange Membrane)形水電解:プロトン(水素イオン)を選択的に透過させる高分子膜(PEM)を利用した水電解方式。