NGNの「技術とサービスと運用」の関係
江﨑 そうですよね。NGNでは、基本的にはトランスポートの部分がすべてIPベースになっていく。そして次にインターネットとの接続方法、さらに他のIMSのネットワークとの相互接続がどうなっていくのかというところが、一番気になっています。一般に、ネットワークの議論では、「技術とサービスと運用」というのが区別されずに話される場合が非常に多いですよね。
そこで、NGNをこの視点から整理しますと、NGNの「技術」はIPでいく。「サービス」はインターネットと、インターネットではないものがある。それを「運用」するときの、ネットワークの切り分け方、それからどのように通信経路を制御するか、などがあります。このあたりが、私が一番気になるところです。現時点でウルトラ3Gも含めて、NGNはどのようにデザインされているのでしょうか?
例えば、身近な例としてユーザーの端末のポータビリティをどうするかという問題です。現在のところ携帯電話の場合は、携帯電話機そのものはモバイル通信事業者ごとにバンドルされて売られている。ところが、FMCということで固定系が入ってくる。固定系の電話はもはや通信事業者にバンドルされていませんよね。
FMCということで、有線電話も携帯電話も利用環境が統合化されるとすれば、端末のプロトコルの部分では、少なくともポータビリティが保証される必要があると思います。この辺はどうなのでしょうか。
冲中 理想形は間違いなくそうなのです。しかし、例えば固定系のシステムも移動系のシステムも、すでにそれぞれ独自に運用され、サービスも提供されています。ある日突然それがガラっと変わるということにはなりません。
まず、一つの端末で移動網にも固定網にも接続できるというモデルを作ったときに、そこに使うプロトコルは移動用と固定用では、少なくとも当初の10年くらいは、異なるプロトコルが使い続けられながら、段々と統一されていくと思います。
江﨑 そうなんですよね。
冲中 それをいますぐ一緒にしようという試みは、あまりにも無謀ではないかと思っています。移動系のほうは、ローミングという形でネットワークをまたがって通信できる仕組みがあり、業界のコンセンサスができています。そこで、固定系はどうするのかということですが、NGNあるいはウルトラ3Gでは、基本的にはIETF(欄外の解説を参照)標準のSIPベースのシステムにして、固定系の解決を図ることになります。