国際的な周波数分配に基づく日本国内の周波数分配
これら会合による検討結果を受け、WRCにおいて決定された国際的な周波数分配のうち、第3地域(アジア、オセアニア)の分配に基づき、日本国内における周波数分配が決められることになります(世界を3つの地域に分けて国際分配が規定されており、第1地域は欧州、アフリカ、ロシア、第2地域は南北アメリカ)。
これについては総務省が「周波数割当計画」を作成しています。「周波数割当計画」は、電波法第26条第1項の規定に基づき、免許の申請の際などに役立つように、総務大臣が作成し公開する「割り当てることが可能である周波数の表」で、主に次の事項が記載されています。
(1)無線通信規則に規定される国際分配
(2)固定業務、移動業務など、無線通信の業務別の周波数の割当て(国内分配)
(3)電気通信業務用、放送業務用など、無線局の目的別の周波数の割当て
(4)周波数の使用期限等、周波数の使用に関する条件
この「周波数割当計画」は、官報で告示するとともに、総務省の「電波利用ホームページ」(http://www.tele.soumu.go.jp/ )に公開されており、電波の利用に当たって必要となる無線局免許においては、「周波数割当計画」に基づき、周波数の割り当て可能性の審査が行われることとなります。
日本の無線局免許、無線従事者制度
電波干渉や混信を起こさずに有限な資源である電波を有効利用するため、電波を利用する場合は、原則的に総務大臣の「免許」を取得し、無線局を開設しなければなりません。また、無線局によっては、その無線設備を操作するために、一定の能力が要求される場合があることから、無線従事者制度が設けられています。次にそれぞれを解説します。
【1】無線局免許のしくみ
無線局免許の手続きは、原則、(1)申請、(2)審査、(3)予備免許、(4)検査、(5)運用、の流れで行われます(図5)。

図5 無線局免許手続きの流れ
まず、申請するには、申請書、および無線局の開設目的、設置場所、使用する無線機の工事設計等を記載した書類を総務省(各総合通信局)に提出します。この申請に基づき、総務省(各総合通信局)は、
(1)工事設計が電波法に定める技術基準に適合すること
(2)周波数の割り当てが可能であること
(3)総務省令で定める無線局の開設の根本的基準に合致すること
などの基準に沿って審査を行い、審査に通った場合、予備免許が与えられます。
予備免許の取得後は、工事設計等に基づく工事完了の「落成届」の提出により、総務省(各総合通信局)による落成検査が行われ、免許状の交付、運用開始となります。
なお、携帯電話などの陸上移動局、簡易無線局、パーソナル無線、アマチュア無線等、使用する無線設備が技術基準適合証明を受けている場合には、予備免許、検査等の手続きが省略され、審査の結果、法令に適合していると認められれば免許が与えられることになります。
ただし、無線局免許申請者については、外国性の排除(日本国籍を持たない人、外国の法人など)、反社会性の排除(電波法や放送法に規定する罰金以上の罪に処せられたり、無線局免許の取り消しを受けたりしてから2年経過していない人など)の規定があり、これらに該当する場合、免許が与えられない場合があります。
また、上記のほか、2004年5月の電波法改正により、無線局の登録制度も導入されています。この制度の概要については、次回に解説します。
【2】免許不要の無線局
先ほど、電波の利用には免許が必要と書きましたが、無線局が発射する電波が極めて弱い場合や、一定の条件の無線設備だけを使用し、無線局の目的、運用が特定されているものなど、無線局の中には免許が不要なものがあります。その主なものは次のとおりです。
(1)発射する電波が著しく微弱な無線局
(2)市民ラジオ(27MHz帯のトランシーバ)の無線局
(3)小電力の特定の用途に使用する無線局
(家庭で使用されているコードレス電話、ETC(Electronic Toll Collection System)の車側の無線装置、車両衝突防止のためのミリ波レーダー、病院などで心電図などの生体信号を伝送するための医療用テレメーター等)
【3】無線従事者制度
無線設備の操作をする人が、電波に関する一定の知識・技能を持っていることを証明する無線従事者資格は、次の図6のとおりです。資格ごとに操作可能な無線設備が異なりますが、原則、この資格がなければ無線設備の操作を行うことができません。

図6 無線従事者資格
この無線従事者資格は、国家試験に合格する、養成課程(講習)を修了する、学校で無線通信に関する科目を修めて卒業する、一定の資格で業務経歴を得る、などにより資格を取得することができます。
なお、これら制度・手続き等に関する詳細、連絡先などについては、総務省の電波利用ホームページ( http://www.tele.soumu.go.jp/ )に掲載されています。