[特集]

対談:電波・周波数を語る(4):テレビの跡地利用からWRC-07の周波数割り当てまで

2006/12/04
(月)
SmartGridニューズレター編集部

次世代の高速無線LAN「802.11n」や、802.16e-2005に準拠した「モバイルWiMAX」などの登場を背景に、「電波・周波数」の割り当 てとその有効利用が大きな注目を集めています。ここでは、その現状と課題について、上智大学 理工学部 電気電子工学科 服部 武 教授と、総務省 総合通信基盤局 電波部長 河内正孝氏に対談を行っていただきました。これまでの、
<テーマ1>通信に適した周波数はなぜ5GHz以下なのか?
<テーマ2>UWB/電子タグ (RFID)から802.11nまでの周波数
<テーマ3>4つのワイヤレス・ブロードバンド:
WiMAX、802.20、iBurst、次世代PHS
に続いて、今回(最終回)は、
<テーマ4>テレビの跡地利用からWRC-07の周波数割り当てまで
についてお話いただきました。
(文中、敬称略、司会:インプレスR&D 標準技術編集部)

服部武 vs 河内正孝

上智大学 服部 武 教授 VS 総務省 電波部 河内 正孝 部長

 

アナログ放送の停波で130MHz幅が空く

—放送の電波についてお聞きしたいのですが、まず2011年のアナログ・テレビ放送の停波に伴うテレビの跡地利用の問題というのはどう考えておられますでしょうか

河内 アナログ・テレビ放送が2011年に終了した後、そこで使われている電波の周波数を整理して、新しい用途に使えるようにする取り組みを現在進めています。これをテレビの跡地利用問題と呼んでいます。この図に示すように〔連載:活発化する電波/周波数の割り当て(3)の第9図を参照 〕、現在、低いところから言いますと、VHFのテレビの1~3チャンネル(ch)の周波数帯90~108MHzの18MHz幅、それから、4~12チャンネル(ch)の170~222 MHzの52MHz幅は、完全に空くわけです。

さらに、UHF帯の53~62チャンネル(ch)の710~770MHzの60MHz幅も空きます。ただし、この710~770MHzは、現在、地上デジタル・テレビ放送でも使っているので、アナログのテレビがなくなっても、すぐには空かないんですね。そこでもう一度、その地上デジタル・テレビ放送を、下のほうの13~52チャンネル(ch)の空いた所に移動させていってから、そこの60MHz幅が使えるようになるのです。

その結果、先ほど示した図のように、合計70MHz+60MHz=130MHz幅の周波数帯が空いてくるということなのです〔連載:活発化する電波/周波数の割り当て(3)の第9図を参照 〕。

その130MHz幅の周波数帯は、テレビジョン以外の放送の用途に使えるようになっていますが、具体的にどのように使うのかということについては、現在、情報通信審議会 情報通信技術分科会 電波有効利用方策委員会 で検討をしています。そこでどんな用途に使いたいかについて、各関連事業者に提案を求めたところ、周波数の異なる場合も重複カウントして、181システムもの提案がありました。

—とても意欲的ですね

河内 ええ。今、181システムの提案を絞り込んでいるところです。よく似たシステムとか、明らかに用途として使えないシステムなどを排除して、10月21日現在、33システムまで絞り込んだのです。それでも各システムからの要望の周波数を全部足し合わせると、空き周波数(130MHz)の6倍くらいになっているのです。

ページ

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...