[標準化動向]

3GPP2の標準化動向(1):次世代CDMA、2007年4月頃の標準化を目指す

2006/08/18
(金)
SmartGridニューズレター編集部

3GPP2におけるリリース

3GPP2では、技術仕様が完成次第、随時仕様をリリースするが、3GPPのような明確なリリースという概念はない。しかし、1999年12月前後に承認された技術仕様をリリースAと呼んでいる。

無線インタフェースの5つの技術仕様書(C.S.0001~C.S.0005)をコア・スペックとし、表1のようなリリース番号をつけて機能セットごとに管理している(C.S.:Core Specification、コアとなる技術仕様)(※注:リリースA〜Dは現在、リビジョンA〜Dと呼称しています。詳しくは「3GPP2の活動内容」の”リリースの呼称法”をご参照ください。)

表1 3GPP2におけるリリース番号による機能セットの管理
表1 3GPP2におけるリリース番号による機能セットの管理

新しい版は、古い版を基本的に包含しており上位互換となっている。また、コア・スペックとそれ以外の関連仕様書は、ユーザーが組み合わせて使用する。なお、無線高速データ通信専用規格(1x EV-DO:1x Evolution-Data Optimized)は、コア・スペックとは別の単独の技術仕様書となっている。

各技術仕様書には、各国で使用する周波数帯ごとに必要とされる仕様が併記されており、これをバンド・クラス(BC:Band Class)と呼んでいる。現在のところ、バンド・クラス0(以降、BC0と略記)からBC12までの13種類が決められている。日本が関係するのは、BC3(800MHz帯:日本のみで使用されるバンド)と、BC6(2GHz帯:IMT-2000として各国共通に使用されるバンド)である。

3GPP2の活動内容

CDMA2000(TIAのIS-2000シリーズに相当)の標準化は、cdmaOne(TIAのIS-95シリーズ)の標準化から継続されている(TIAとはTelecommunications Industry Association(米国電気通信工業会)のことで、IS(Interim Standard)はTIAが定める暫定基準のこと)。

まず、TIAでIS-95-Aが規格化され、これにパケット・データ部分の高速化(最高115.2kbps)や、ソフト・ハンドオフ機能を追加したものがIS-95-B規格。ソフト・ハンドオフ機能とは、端末の移動に伴って通信チャネルを基地局間で切り替えるハンドオーバー機能の1つで、通信の瞬断を防いで品質の高い通信を提供する。

さらに、パケット・データ部分の高速化(最高307kbps)を図り、1x(シングル・キャリア)、MC(マルチ・キャリア)、DS(直接拡散)のすべてのモードに対応できる物理層サポートを可能とするなどの特徴をもつ、CDMA2000フェーズ1(IS-2000リリース0)が1999年7月に公開された。

続いて、3xのシグナリングをサポートし、2Mbpsのデータ伝送を可能とするなどの機能をもつCDMA2000フェーズ2(IS-2000リリースA)が公開され、2000年7月に3GPP2仕様として初めて完成した(リリースA[現在のリビジョンA])。

また、データのみ最大伝送速度2.4 Mbpsを可能とする1x EV-DO(C.S.0024)は、2000年12月に公開された。その後、2002年4月には、レスキュー・チャネル(復旧用チャネル)の導入を主な特徴とするリリースB(現在のリビジョンB)が公開された。

続いて2002年5月には、通常の音声とデータ、ならびに高速ダウンリンク・データ伝送を可能とする1xEV-DV(1x Evolution-Data and Voice、高速データと音声通信の両方に対応できる規格)の導入、VoIP(Voice over IP)、3GPPのAKA(Authentication and Key Agreement、認証/暗号鍵配送スキーム)と同じ認証システムなどを主な特徴とするリリースC(現在のリビジョンC)が公開された。

2004年3月には、コール・リカバリ(呼の復旧)機能強化や、音声チャネル拡張、リバース・リンク(移動局から基地局への通信回線)拡張、MEID(Mobile Equipment Identifier、移動機識別子)に対応したリビジョンDが公開された。

リリースの呼称法

3GPP2では、当初リリースAを1999年末、リリース Bを2000年末、リリースCを2001年末に公開する計画だったが、各リリースともその時期がずれ込んだなどの経緯から、TSG-Sでリリース・コンセプトやプランニングについて検討を進めた結果、技術仕様書のリリース方法が制定され、仕様書番号体系に基づいて管理されるようになった。

この番号体系では、第1回目をリリースとし、それ以降の改訂はリビジョン(revision:A~Zを付与し、「リビジョンA」は第1回目のリビジョンのこと)としている。そこで、先に発行されたCDMA2000のリリースA~リリースCも、CDMA2000のリビジョンA~リビジョンCと呼ばれている。

なお、3GPP2における標準化のプロセスは、3GPPとまったく同じである。(本サイトの「3GPPの標準化動向(1) 」を参照してください)

今後の動向

3GPP2では、CDMA2000技術仕様のリリース計画に関するガイドラインが、2004年に制定され、すでに次期リリースの開発計画の検討が開始されている。検討の中心となる無線インタフェースの次期技術仕様については、リビジョンEの開発項目の提案募集が進められ、盛んに議論されている。

無線インタフェースの発展をテーマにしたTSG-Cの専門家会合が、2005年3月に米デンバーで開催され、フェーズ1としてマルチキャリアEV-DO、フェーズ2として次世代CDMA無線インタフェースの仕様検討に着手することが決定された。

さらに、無線技術の発展をテーマにしたワークショップが2005年6月末に韓国ソウルで開催され、CDMA2000の将来像に関わる議論も開始された。

次世代CDMA無線インタフェース仕様(名称は未定)に関する検討は、2006年2月に開始され、2006年10月頃に方式選定を行い、同年12月頃に仕様書のドラフトを完成、2007年4月頃に仕様書を発行するスケジュールで検討が進んでいる。

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