2008年に交換機を捨て、ソフト・スイッチに!
—交換機はいつ全部捨ててしまうのですか?
冲中 私どもの場合は、固定系のほうは、2008年には捨てたいと思っています。ただし、携帯系は残りますよ。携帯系は、ネットワークが大きすぎるので、一気に変えたら投資金額が大きすぎるし、移行作業も膨大になるからです。
—交換機の代わりにどんな装置が使われるのでしょうか?
冲中 固定系の交換機は、ソフト・スイッチ(SIPとルータで構成)に変わるのです。すなわち、SIPサーバが交換機の制御部分の役割を果たし、交換機の経路スイッチの部分がルータに置き換わる構成になります。
それと、さっきのなぜIP化するかの理由はもうひとつあります。最近、接続できることがあたりまえという時代を迎えています。つながらないと、KDDIのネットワークは質が悪いといわれて、すぐお客様に契約をやめられてしまうのです。その接続性の部分ではもう競争できないのです。
しかし、値段では競争したくない。そこで、他社とは違うサービスを早く出して、このサービスがあるから使い続けますという、お客様のモチベーションを作っていかないといけない。早くサービスを作るためには、何がいいというと、やはりIPベースのサーバ・クライアント・モデルなのです。
江﨑 グローバル・リーチャビリティ(グローバルな接続性の広さ)というのは、大事なことです。ですから、グローバルにルーティングできるというということを保証しておいて、ユーザーを囲い込むという戦法のほうが、多分簡単だと思うのです。
この逆をやると、つまり囲い込んでおいてからネットワークを無理矢理、外部とつなごうとすると、接続口のところがとても大変なわけです。そういう意味でルーティングにインテリジェンスをもたせて、能力としては全部つなげることができるようにしておくというのが、最終的にはよいのではないかと思います。
冲中 そうなのですが、ルーティングができる、できないというのは、お客様から見ると、できて当たり前なので、付加価値に見えないのです。空気みたいな感じなのです。つまり、今と同じ値段でどうやって品質を上げていくか、というような競争の世界なのです。
江﨑 ですから、私はオールIP化について、やっぱりそこがポイントだと思うのです。きちんとした競争が起こって、その競争というのが利用料金の叩き合いではなくて、クオリティ(品質)で勝負していくというフェーズに、すでに入っているのではないかと思います。
冲中 特にデータ通信系の場合、新しいシステムとか、方式を導入するときの評価基準は、ビット単価なのです。ですから、ビット単価が、ケタが落ちるくらい下がらないのなら勝負にならないのです。
江﨑 そうですよね。ですからEV-DOを導入しサービスを開始したのですよね。
冲中 そうです。CDMA2000 1Xに加えて、EV-DOを導入したときのわれわれにとって一番のモチベーションは、そこにあったのです。