[標準化動向]

NGNの標準化動向(2):NGNアーキテクチャの基本と総務省・TTCの標準化体制

2006/08/31
(木)
SmartGridニューズレター編集部

NGNの標準化体制と取り組み

【1】日本でのNGNの開発段階

最初に、実用化に向けて、日本でNGNがどのような開発段階にあるかを、NTTの状況から見てみよう。

去る(2006年)7月21日、NTTグループは、NGNの本格的な商用サービスの開始に向けた技術の確認とユーザー・ニーズを把握するため、NGNのフィールド・トライアル(実証実験)を、2006年12月を目途に開始すると発表し、それに先立ってフィールド・トライアルにおけるインタフェース条件を公表した。

同時に、フィールド・トライアルへの参加条件についても公表し、情報家電ベンダ、サービス・プロバイダや他の通信事業者(キャリア)などからの参加受付を開始した。
(参考:http://www.ntt.co.jp/news/news06/0607/060721b.html

このように、現在、日本ではNGNはフィールド・トライアルの段階まできている。このような現状を把握した上で、日本におけるNGNの標準化体制と取り組みを整理する。

【2】標準化活動の全体的な流れ

図2は標準化を行う場合の、一般的なITU(加盟国数190カ国、2006年3月時点)と総務省と民間標準機関の3者の関係を示したものである。

図2 標準化活動の全体的な流れ
図2 標準化活動の全体的な流れ (クリックで拡大)

(1)民間標準化機関:TTC、ARIB、JCTEA

図2の右端に示す民間標準化機関であるTTC、ARIB、JCTEAは、それぞれ次のような分野を中心に標準化活動を行っている。

TTC:Telecommunication Technology Committee、社団法人 情報通信技術委員会。ITU-T(固定網を中心とする標準化)関連の標準化を担当。

ARIB:Association of Radio Industries and Businesses、社団法人電波産業会。ITU-R(移動網を中心とする標準化)関連の標準化を担当。

JCTEA:Japan Cable Television Engineering Association、社団法人 日本CATV技術協会。CATV技術に関する標準化などを担当(ITU-T SG9等)。

図2に示すように、TTCの場合、標準化された規格に基づく製品の相互接続試験を行うために、CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会、用語解説参照)内のHATS推進会議と連携している。HATS推進会議(用語解説参照)は、これまでも、ISDN端末やFAXなどの端末の相互接続を行い認定してきている。

【3】総務省内の情報通信審議会 情報通信分科会

ITU-T関連の「ある規格」を国際標準化する場合、日本では図2で示したように、総務省の中にある情報通信審議会 情報通信分科会(例えばITU-T部会など)での審議を経た上で、ITUに提案するという仕組みになっている。

例えば、電気通信事業者や放送事業者あるいは製造業者、ユーザーなどから出されるITU-T関連の案件(これは「アップストリーム」と呼ばれる)の場合は、

(1)直接、情報通信分科会に参加し、審議後ITU-Tに提案されるケース

(2)TTCやJCTEA(ITU-Rの案件の場合はARIB)などに参加し、そこでの検討を経てから情報通信分科会で審議、その後にITU-Tに提案されるケース

の2つのケースがある。また、ITU-TやITU-Rからの勧告(「ダウンストリーム」と呼ばれる)の受け皿は、それぞれ対応する組織が担当する。

【4】ITU-Tでの投票権と承認手続き制度

一方、ITUにおける投票権は、国の大小に関わらず1国で1票である。これまでは、基本的に全会一致制であり、1国でも反対があれば勧告(標準化)にならなかった。また、勧告案ができてから承認に至るまで約9カ月を要していた。この承認手続き制度は、WTSCの決議1(注:WTSCは現在、WTSAに名称を変更)に定められている。

しかし、2000年9月にカナダ(モントリオール)で開催された、ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)の総会「2000年世界電気通信標準化総会(WTSA-2000)」で、代替承認手続き「AAP(Alterative Approval Process)」の勧告(A.8)が同意され、準技術的な勧告であれば最短では4週間で承認が可能となった。

さらに、2004年ブラジル(フロリアノポリス)で開催されたWTSA-04では、AAPについてのみ2カ国以上の反対がない限り、勧告として承認されることになった。

このAAPは、ITU-Tのすべての勧告に適用されるのではなく、現行のITU-T勧告の90%以上を占める「技術的な勧告」に限って適用される制度である。その他の政策的な勧告、制度的な勧告は、従来どおりWTSCの決議1の手続き「TAP(Traditional Approval Process)」で行う。

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