前回は、ITU-TにおけるNGNの標準化の体制、およびNGN標準化動向について詳しく解説し、2006年9月に確定したNGN リリース1(勧告Y.NGN-R1)のうち、スコープ(標準化の範囲)や要求条件ついて紹介した。今回は、アーキテクチャ(ネットワーク構成・構造や基本設計など)や要求条件を規定する文書について、その内容を紹介する。
NGNのアーキテクチャ
[Y.2012 (Y.FRA)]
前回解説したNGNリリース1の要求条件[Y.2201 (Y.NGN-R1-Reqts)]に準拠した、NGNの機能的なアーキテクチャについて規定された文書であり、NGNにおける様々なフローを規定する際に検討のベースとなる。
この文書では、NGNのアーキテクチャの概要や、機能的なアーキテクチャの一般則(抽象的な設計思想)などが記述されている。また、NGNの機能がサービス・ストラタムとトランスポート・ストラタムの2つに分離されていることや、NGNリリース1において要求される機能条件などについても細かく記述されている。
その中で、UNI (User Network Interface、ユーザー・網インタフェース)、NNI (Network Network Interface、網間インタフェース)、ANI (Application Network Interface、アプリケーション・ネットワーク・インタフェース) のそれぞれのインターフェイスが明示されており、明確に機能分離がなされている。また、サービス提供部などにおいて、複数の構成も許容する汎用アーキテクチャとなっており、その概要が記述され、詳細についてはY.2021やY.2031(ともに後述)で規定することとなっている。
NGNにおけるIMS
[Y.2021 (Y.IFN)]
NGNにおけるIMS(IP Multimedia service Component)は、3GPP (3rd Generation Partnership Project)におけるIMSと基本的に同じものであり、SIPベースのマルチメディア・サービスと、PSTN/ISDNシミュレーション・サービスを提供するものである。この文書では、他のネットワークとの相互運用方法や参照点[他のネットワークとの相互接続点(インタフェース点)のこと]などが記述されている。
NGNにおけるIMSと3GPPにおけるIMSとの違いとしては、トラフィックの経路制御や相互運用の部分において、機能を追加して実装することがあり、また、信号レベルでの他のネットワークとの相互接続点や、PSTN/ISDNエミュレーション・サービスを提供する他のネットワークとの相互接続点も、3GPPにおけるIMSから追加されたものである。
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