[特集]

対談:電波・周波数を語る(4):テレビの跡地利用からWRC-07の周波数割り当てまで

2006/12/04
(月)
SmartGridニューズレター編集部

2007年6月の答申を目標に作業中

河内 そこで、これをさらに絞り込むというか、統合できるものは統合して、空き周波数の130MHz幅に近いところまで持っていこうというのが、現在進められている作業です。これは、2007年の6月(一部答申)までを目標としています。実際に使えるようになるのは、2011年にアナログ・テレビ放送の電波を止めてからですから、その後になるわけです。

—この33システムというのは、どのようなシステムが多いのでしょうか?

河内 自営無線システムが一番多いですね。例えば、公共事業の消防や警察、あるいはJRの列車運行用とか、自治体の防災システムというような用途が数としては一番多いですね。

あとは放送系です。例えば、MediaFLO(メディア・フロー ※1)のようなものもありますし、現在のデジタル放送の技術を踏まえたようなワンセグ系のシステムなどもあります。もちろん、デジタル・ラジオや、また今後、電波の需要が急増するため、大本命ともいわれている携帯電話システムなども提案されています。

—服部先生、今の周波数の跡地利用の問題をめぐってご意見は?

服部 これらの電波は700MHz程度以下の低い周波数帯ですから、電波の回折もよく、非常に遠距離まで届きますね。ですから、この周波数帯は携帯電話だけではなくて、ITS(高度道路交通システム)をはじめ、いろいろな用途に向いています。このため、このあたりの周波数へのニーズは非常に高まってきています。私もこの委員会の委員になっていますけれど、皆さんが非常に多くのアイディアを出されてびっくりしています。

用語解説

※1 MediaFLO:Media Forward Link Only
サーバーからマルチメディア・コンテンツを一方向に伝送する、すなわち放送するという意味。クアルコム社が推進する携帯電話機向けマルチメディア配信サービスの名称。従来のような単純な放送だけではなくて、インターネットを含めた、インタラクティブな放送を目指している。

WRC-07で、第4世代(4G)の周波数を割り当て

—2007年というのは、WRC-07で、第4世代携帯電話(4G)に向けて、新しい周波数の国際的な割り当てが行われるのではないかと注目されていますが

河内正孝氏

河内 携帯電話は、非常に発展していまして、次の時代の第4世代(4G)携帯電話に対する期待も高くなってきています。日本は、この分野では技術的に世界のトップを走っていて、第4世代の技術についても、世界を引っ張る役割を担っています。

2010年頃からのサービス開始に向けて、第4世代についての技術仕様とか周波数も完全に固めるためには、その前の、2007年のWRC-07(世界無線通信会議、※2)の段階で、周波数の割り当てについて世界的な合意を得ることが必要になります。

2007年のWRC-07は、2007年10月15日から11月9日まで、スイスのジュネーブにおいて開催される予定となっています。今後、そこに向けて、いろいろな事前の会合で検討が進められます。大まかには、このあと2007年2月の、事前準備会合(CPM、※3)を経て、10月のWRC-07に進んでいく流れです。
今回のWRC-07の最大のテーマは、第4世代に向けての周波数をどこにするのかという議論です。

用語解説

※2 WRC:World Radiocommunication Conference、世界無線通信会議
ITU(国際電気通信連合)が主催し、国際的な周波数帯の利用方法や無線局の運用に関する各種規則などを策定する会議。通常2~3年ごとに開催される。本サイトの連載:活発化する電波/周波数の割り当て (2) を参照。

※3 CPM:Conference Preparatory Meeting
WRC準備のための技術的検討や規則的検討の体制・計画などを策定する。最終成果をWRCの文書として取りまとめる。通常、WRC直前とWRC直後の2回開催される。

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