周波数の分配はどのように決定されるか?
電波は目に見えませんが、国境を越えて国外まで飛んで行き、混信を起こす恐れがあります。現在、電波を使って、携帯電話、衛星放送、地上放送、船舶通信、航空通信など、さまざまなサービスが行われていますが、これらのサービスの利用者が支障なく通信を行うためには、それぞれの無線通信サービスが、お互いに他の無線通信サービスからの混信を避け、正常な運用を確保することが必要です。
このため、各サービスが使用可能な周波数分配とその条件について、国際連合の専門機関である国際電気通信連合 (以下ITU:International Telecommunication Union)において、国際的にルールが策定されており、電波に関する国際的秩序を規律しています。
また、各国においては、ITUの国際的な枠組みを尊重し、国際的な整合性を保ちつつ、国内の周波数割当て、免許制度、技術基準、従事者制度等を定めています。
ITUにおける国際的な周波数分配の決定プロセス
ITUは、1865年に設立された電気通信に関する国際連合の専門機関です。本部はスイスのジュネーブにあり、日本は1879年に加盟しています。
ITUの主な任務は、
(1)国際的な周波数の分配
(2)電気通信の標準化
(3)開発途上国に対する技術援助
であり、それぞれをITU-R (ITU-Radiocommunication Sector、無線通信部門)、ITU-T (ITU-Telecommunication Standardization Sector、電気通信標準化部門)、ITU-D (Telecommunication Development Sector、電気通信開発部門)が担当しています。
ITUの3部門は、会議、総会、研究委員会、局などから構成されています。本連載のテーマである電波/周波数に関する事項は、ITU-Rが担当しています。
▽国際電気通信連合(ITU)組織図はこちら (PDF)
国際的な周波数分配に関しては、電波に関する国際的秩序を規律している無線通信規則(RR:Radio Regulation)の第5条に規定されており、その改正は、2~3年に一度開催されるITU-Rの世界無線通信会議(WRC:World Radiocommunication Conference)において議論、決定されます。
このWRCに向けて、
(1)研究課題を設定して技術的検討を行う無線通信研究委員会(SG:Study Group)
(2)規則・手続きについて検討を行う規則・手続に関する特別委員会(SC: Special Committee on regulatory/procedural matters)
(3)WRCの準備会合である会議準備会合(CPM:Conference Preparatory Meeting)
などが開催され、国際的な周波数分配の決定に向けた議論が行われることになります。たとえば、第4世代移動通信システム(IMT-Advanced)については、SG8(移動、無線測位、アマチュア業務及び関連する衛星業務)の下に設置されているWP8F(Working Party 8F、IMT-2000の高度化及び後継移動通信システム)において標準化作業が行われています。
WRCにおいては、議題1.4(IMT-2000の高度化及びIMT-2000後継システムの周波数関連事項の検討)として、2007年10月15日~11月9日に開催が予定されているWRC-07に向けて議論が行われています。
▽WRC-07に向けた国内検討体制はこちら(PDF)
▽WRC-07の議題一覧はこちら(PDF)
WRCには、各加盟国から自分の国の事情に即した技術的または制度的提案を行うことができます(主に政府機関が行う。日本は総務省)。これら各国からの提案が調整される際には、1国の単独提案よりも複数国からの共同提案としてまとまって提案した方が優位となります。
そこで日本は、アジア太平洋地域における電気通信専門の地域国際機関であるアジア太平洋電気通信共同体(APT:Asia-Pacific Telecommunity)の地域会合であるAPG(Asia-Pacific Telecommunity Conference Preparatory Group for WRC)においてとりまとめられるアジア太平洋地域の共同提案の中に、日本の提案が盛り込まれるよう働きかけを行っています。参考までに、WRC-07に向けた主な会合スケジュールを示します(図2)。