[標準化動向]

NGNの標準化動向(2):NGNアーキテクチャの基本と総務省・TTCの標準化体制

2006/08/31
(木)
SmartGridニューズレター編集部

前回は、NGN(次世代ネットワーク)の誕生から、ITU-Tの体制や最新の標準化動向などを解説した。今回は、まずNGNの基本的なアーキテクチャを解説する。NGNアーキテクチャは、基本的に2つのレイヤ〔正式には「ストラタム」(階層)という。本文中で解説〕構成であるためシンプルに見えるが、機能的にはかなり複雑である。次に、日本国内のNGNの標準化に対する、総務省、TTCなどの体制を述べ、最後にアジアにおけるNGN関連の協力体制を解説する。

NGNのアーキテクチャを整理する

図1は、NGNのアーキテクチャ(構成)の全体像を簡略化した図である。NGNでは、各機能が入り組んでいるため、OSIの7階層モデルのように、整然と7レイヤ(階層)に機能を分けられない(欄外の用語解説参照)。このため、混同しないようにレイヤという用語の代わりに、ストラタム(Stratum、階層)という用語が使用されている〔ITU-T 勧告Y.2011「Next Generation Networks – Frameworks and functional architecture models(NGNのフレームワークと機能的なアーキテクチャ・モデル)」〕。

図1 NGNの基本的なアーキテクチャ
図1 NGNの基本的なアーキテクチャ (クリックで拡大)

図1に示すように、NGNのアーキテクチャは、基本的に2つのストラタムと3つのインタフェース(接続点)で構成されている。

【1】2つのストラタムの機能

図1に示すように、NGNは、相互に独立し分離された、NGNトランスポート・ストラタムとNGNサービス・ストラタムという2つのストラタムで構成されている。これによって、各ストラタムが必要とする機能を、他のストラタムとは独立して、容易に追加できる仕組みとなっている。

(1)NGNトランスポート・ストラタムの機能

NGNトランスポート・ストラタムは、基本的にオールIP(Internet Protocol)化されたコア・ネットワーク(基幹ネットワーク)によって、すべての情報をIPパケットで通信する、トランスポートの機能(パケット転送機能)をもつストラタムである。

この部分は図1のように、ADSLやFTTH、WiMAX、3G/3.5Gなどのアクセス・ネットワークなどの機能も含んでおり、また、他のネットワークと相互接続するためのゲートウェイ機能なども備えている。

さらに、IPベースではあっても、インターネットのようなベストエフォート型の通信と異なり、QoS(通信品質)が保障されたトランスポート機能となっている。また、固定系と移動系の両方に対応できるため、FMC(Fixed Mobile Convergence、有線と無線の統合)を実現するアーキテクチャとして大きく期待されている。

(2)NGNサービス・ストラタムの機能

NGNトランスポート・ストラタムの上位に位置するNGNサービス・ストラタムは、サービス制御機能(あるいはコントロール・レイヤ)ともいわれる。この部分は、上位のいろいろなアプリケーションに対応できるように、3GPPで標準化されたIMS(IP Multimedia Subsystem、IPマルチメディア・サブシステム)が中心的な役割を担う。

IMSとは、映像(映画や放送)や音声などのリアルタイム通信が求められるアプリケーションを、IP(Internet Protocol)をベースとするパケット・ネットワーク上でも提供できるようにするために標準化された仕組みである。

このIMSでリアルタイム通信を実現するために、すでにIP電話などにも使用されているSIP(Session Initiation Protocol、セッション開始プロトコル)というプロトコルが採用されている。このSIPは、電話のように通信する際に、相手と接続(セッション)を確立させてから通信を行うようにする機能をもっているため、シグナリング・プロトコル(呼制御プロトコルまたは、通信制御手順)と呼ばれている。

このように、SIPによる NGNサービス・ストラタムは、アプリケーション・サービス(例:電話)を提供する際に、相手とのセッション(接続)を確立したり、開放したりするので、「サービス制御機能」ともいわれる。

つまり、NGNサービス・ストラタムは、SIPを使用したIMSという仕組みによって、IPベースの通信でありながらリアルタイム性を含むあらゆるアプリケーションに対応できる「サービス制御機能」を提供しているのである。

【2】3つのインタフェース

一方、NGNがいろいろなユーザーの端末とやり取りしたり、他のネットワークと相互接続したり、映像・音声・データなどのアプリケーションとやり取りするために、図1で示した次の3つのインタフェース(接続点)が規定されている。

(1)UNI(User to Network Interface)

ユーザー・網インタフェース。ユーザー端末とNGNとの間のインタフェース(接続点)仕様のことである。

(2)NNI(Network to Network Interface)

ネットワーク-ネットワーク・インタフェース。NGNと他のネットワーク、例えばインターネットや専用線あるいは電話網などを相互接続するためのインタフェース(接続点)仕様のことである。

(3)ANI(Application Network Interface)

アプリケーション・ネットワーク・インタフェース。映像・音声・データなどを提供するアプリケーション機能とNGNの間のインタフェース(接続点)仕様である。

以上、NGNの基本的なアーキテクチャの仕組みをみてきた。次に、このようなNGNに対して日本ではどのような組織が対応して、標準化を推進しているかを見てみる。

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