[特集]

NGNの核となるIMS(6):IMSと課金およびQoS制御(その1)

2007/03/23
(金)
SmartGridニューズレター編集部

IMS課金のためのSIP拡張

IMS課金のために、P-Charging-Function-AddressヘッダとP-Charging-VectorというパラメータがSIPで拡張されました。課金に使用されるこれらのヘッダは、IMSシステム内で利用されるパラメータです。P-CSCF(端末と接続するSIPサーバ)が、端末に対してSIPメッセージを送信する場合、これらのヘッダは削除されます。

P-Charging-Function-Address(課金機能アドレス)は、SIPメッセージで課金情報の宛先となるCDFとOCSのIPアドレスを送信するために使用されます。CDFとOCSのアドレスは、HSS(ホーム加入者情報の管理サーバ)に収容されています。S-CSCFは、HSSよりこれらのアドレス情報を取得して、P-Charging-Function-Addressヘッダを使用することにより、SIPメッセージで他のノードへと情報を配信することができます。プロトコル上では、CDFはCCF(Charging Collection Function、課金収集機能)と呼ばれ、OCSはECF(Event Charging Function、イベント課金機能)と呼ばれています。

【1】課金ベクトル「P-Charging-Vector」

P-Charging-Vector(課金ベクトル)は、複数のIMSノードで生成されるCDRの連携をとり、料金請求システムなどであるセッションに関連する一連のCDRを特定するために使用されます。P-Charging-Vectorは、次のパラメータを含みます。

(1) ICID(IMS Charging Identifier、IMS課金ID)
IMSノード間で同一のセッション/トランザクションに対して共有されます。グローバルに重複しない唯一の値をとり、最初のIMSノード(例:IMS端末発時はP-CSCF)で生成され、SIPメッセージを通じて配信されます。

(2) IOI(Inter Operator Identifier、事業者間ID)
同一のセッション/トランザクションに対して発信事業者(orig-ioi)と着信事業者(term-ioi)をお互いのネットワークで識別するために事業者間で配信されます。IOIには次の3つのタイプがあります。

IOIタイプ1:IMSローミングで在圏網(P-CSCF)とホーム網(S-CSCF)の間で使用

IOIタイプ2:IMS相互接続で発信網〔S-CSCF(IMS発信)またはMGCF(CS発信)〕と着信網〔S-CSCF(IMS着信)またはMGCF(CS着信)〕の間で使用

IOIタイプ3:サービス・プロバイダ(IMS AS)とIMSホーム網(S-CSCFまたはI-CSCF)の間で使用

(3) access-network-charging-info(アクセス網課金情報)
IP-CAN(IP-Connectivity Access Network、IP接続アクセス網;ベアラ・レベル)の課金情報とIMS(セッション・レベル)の課金情報を連携するために使用されます。この情報はIP-CANの種類により異なりますが、例えばIP-CANとして3GPPパケット・ネットワークを使用する場合は、

GGSN(ゲートウェイGPRSサポートノード、3GPPパケット・ネットワークにおけるエッジ・ルータ)アドレス

サービスの承認に必要なトークン

PDPコンテキスト(PDP:Packet Data Protocol、パケット・データ・プロトコル)に関する情報

を含み、この情報はGGSNからP-CSCFへと通知され、S-CSCFへと配送されます。

【2】SIPメッセージで配信される2つのヘッダの信号シーケンス

図3に、P-Charging-Function-AddressヘッダとP-Charging-Vectorヘッダが、SIPメッセージで配信される信号シーケンス例を示します。

図3 SIPメッセージで配信されるP-Charging-Function-AddressヘッダとP-Charging-Vectorヘッダの信号シーケンス例
図3 SIPメッセージで配信されるP-Charging-Function-AddressヘッダとP-Charging-Vectorヘッダの信号シーケンス例

まず、IMS発信時の最初のIMSノードであるP-CSCFでICIDを含むP-Charging-Vectorが生成されます(1)。次に、発事業者と着事業者をまたがる発事業者のS-CSCFで発IOIが生成されます(2)。着側事業者では、S-CSCFから他のノード(P-CSCF)へとP-Charging-Function-Addressが配信されます(3)。同様に、着事業者から発事業者への応答信号により着IOIが送信され(4)、発事業者内ではS-CSCFから他のノード(P-CSCF)へとP-Charging-Function-Addressが配信されます(5)

■■■

用語解説

Rf/Ro:Rf/Roは3GPPで規定される参照点(Reference Point)の名称で略称というわけではない。Rfは3GネットワークノードとCDFの間のオフライン課金用の参照点、Roは3GネットワークノードとOCSの間のオンライン課金用の参照点を示している。Rf/Ro参照点は3GPP TS 32.240 (IMSに関しては3GPP TS 32.260)に規定されている。
BGCF:Breakout Gateway Control Function、ブレークアウト・ゲートウェイ制御機能。IMSから回線交換のネットワークへと相互接続される際に、どのMGCFを通して回線交換へと相互接続するか判断する。
P-CSCF:Proxy-Call Session Control Function、端末と接するSIPサーバ
I-CSCF:Interrogating-Call Session Control Function、S-CSCFへとSIPメッセージをルーティングするサーバ
S-CSCF:Serving/-Call Session Control Function、セッション制御の中心ともいえるSIPサーバ
MGCF:Media Gateway Control Function、メディア・ゲートウェイ制御機能
MRFC:MRF Controller、MRF制御装置
SIP AS:Application Server、アプリケーション・サーバ
CDF:Charging Data Function、課金データ機能
AAA:Authentication, Authorization and Accounting、認証、承認および課金
ACR:Accounting Request、課金要求
CGF:Charging Gateway Function、課金ゲートウェイ機能
INVITE:セッション確立要求
200 OK:要求に対する完了応答
HSS:Home Subscriber Server、ホーム加入者情報を管理するサーバ
orig-ioi:original- inter operator identifier
term-ioi:terminal- inter operator identifier
PDPコンテキスト:3GPPパケット・ネットワークでユーザー・パケットを転送する際に設定される構成情報。
IMS-GWF:IMS-Gateway Function、 IMSゲートウェイ機能。ISCインタフェース(SIP)とRoインタフェース(Diameter)の変換を行う。
ユニット予約:オンライン課金において、リアルタイムにサービスを制御するために、サービスに必要なある課金単位(ユニット)をオンライン課金システムで事前に予約すること。
クレジット制御:リアルタイムに、サービスの使用量を監視して、残高を制御する仕組みのこと。残高のチェック、クレジットの予約、サービス終了時におけるクレジットの削減、と未使用分の返却などを含む。

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