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<前回の≪2≫RADVISIONのソフトウェアツールキットの種類〔1〕SIPツールキット(SIPクライアント開発用ミドルウェア)のつづき>
■SIPサーバは、どのようなプロトコル構成で動作しているのでしょうか?
〔2〕SIPサーバプラットフォーム(SIPサーバ開発用ミドルウェア)の構成
中山 図5に示すように、RADVISIONのSIPサーバ開発用ミドルウェアは、SIPサーバプラットフォームとして、アドオン(追加)モジュールと連動して全世界で提供されるNGNに対して迅速に適合できるようになっています。当社が提供する高機能なAPIによって、SIPサーバを開発する際の複雑さを意識することなく、アプリケーション開発に専念することができます。さらに、アドオン(追加)モジュールを組み合わせることによって、より高機能なSIPサーバの開発が可能となっています。
このSIPサーバプラットフォームは、図5に示すように、主に、
(1)基本的なSIPサーバ機能(1レジストラ、2プロキシーサーバ、3リダイレクトサーバ)、
(2)SIPスタック
(3)OS抽象化コンポーネント
の3つのコンポーネントから構成されています。この他にオプションとして、表3に示す6種類のアドオンモジュールが用意されています。
アドオンモジュール | 内容 |
---|---|
(1)イベント (プレゼンス)サーバ |
SUBSCRIBEメッセージ(RFC3265)やPUBLISHメッセージ(RFC3903)におけるイベント(プレゼンス)サーバの機能である。また、PIDF、WINFO(Watcher Info)を標準でサポートしている。 (注)PIDF:Presence Information Data Format、プレゼンス情報データフォーマット |
(2)IMS | NGNで使用される各種Pヘッダ〔P(Private)ヘッダ:用途を限定して提供するための拡張機能。RFC3325、 RFC3455、RFC3313、3GPP TS.24.229〕、並びにPacketCable仕様のヘッダ(RFC3603) のAPIである。 |
(3)LDAP | LDAP(Lightweight Directory Access Protocol)サーバのようなディレクトリデータベースと連携できるAPIである。(注)LDAP:簡易化されたディレクトリ・アクセス・プロトコル。 (注)LDAP:簡易化されたディレクトリ・アクセス・プロトコル。 |
(4)SDP | RFC4566 に対応したSDP(Session Description Protocol、セッション記述プロトコル)スタックである。 |
(5)B2B | B2Bアプリケーションの開発に適したB2Bアプリケーションフレームワークである。 (注)B2B:Back to Back、1つの呼とそれをきっかけに生成する別な呼を関連付ける |
(6)ハイアベーラビリティ | システムの高稼働率を実現するため、二重化などサーバの冗長構成を行う上で役立つ機能を提供する。 |
表3 SIPサーバツールキットの6種類のアドオン(追加)モジュール(オプション)
このSIPサーバプラットフォームを活用して、図5に示すようなNGN対応のSIPサーバを開発することが可能になります。コアネットワーク内で動作するSIPサーバには、P-CSCF、I-CSCF、S-CSCF(用語は表1参照)の3つのサーバ機能があり、NGNの主要な機能を担っています。さらに、現在、コアネットワークのサブネットワークとして使用されている、現行のIP-PBX(IPに対応した交換機)サーバと同じ機能を提供する、サブSIPサーバを構築することも可能です。
さらに、NGNの特色の1つであるAS(Application Server、アプリケーションサーバ)にも適用されます。このASには、アプリケーションプロバイダの専用サーバからキャリアの独自のサーバまで幅広い用途が考えられます。
ASサーバ開発者コンポーネントについては、図6を参照してください。
〔3〕RTP/RTCPツールキットとその構成
■音声やビデオなどのリアルタイムアプリケーション向けには、どのようなツールがあるのでしょうか?
中山 具体的には、V2oIP(Voice&Video Over IP、IP上で動作する音声とビデオアプリケーション)開発用ミドルウェアとしてRTP/RTCPツールキットを提供しています。このミドルウェアは小型の組込機器から多数の回線を集約し処理するメディアサーバ類に至るまで、幅広い製品の開発をサポートしています。
このRTP/RTCPツールキットは、図7に示すように、主に次の2つのコンポーネントから構成されています。
(1)RTP/RTCP(1.セッションの開始/終了、2.パケット送受信、3.レポート作成、4.アプリケーションへのイベント通知など)スタック(※4)
(2)OS抽象化コンポーネント
さらに、この他にオプションとして、次2種類のアドオン(追加)モジュールが用意されています。
(1)セキュア・リアルタイム・トランスポート・プロトコル(SRTP)
(2)RTP制御プロトコル拡張レポート(RTCP XR、※5)
※4 用語解説
RTP:Real-time Transport Protocol、リアルタイム・データ転送プロトコル
RTCP:RTP Control Protocol、リアルタイム・データ転送制御プロトコル
※5 用語解説
SRTP:Secure RTP:セキュア・リアルタイム・データ転送プロトコル
RTCP XR:RTCP Extended Report、RTP制御プロトコル拡張レポート
■RTP/RTCPツールキットによる具体的な事例はありますか?
中山 図8に、RTP/RTCPツールキットを活用したIMS ベースの IPTV端末の例を示します。RTP/RTCPツールキットは、「メディアの配信と配布」の部分に利用されます。
≪3≫シグナリンク&メディアテストソリューション(ProLabテストツール)の特徴
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■ところで、NGN関連の製品を開発するうえで、いろいろなテストが必要になると思いますが、テスト関連にはどのような製品が提供されるのでしょうか?
中山 RADVISIONでは、NGN関連の製品に対して、これまでに紹介してきた通信ミドルウェアを搭載し、シグナリング(呼制御)や、各種メディアを送受信するようなテスト環境を、ツールとして提供しています。RADVISIONのProLabテストツールは、総合的なメディアテストソリューションを提供することによって、NGN製品の開発サイクルの全工程で、製品品質を向上させることが可能であり、またトータルコストを大幅に削減することができるようになっています。
NGN製品の開発にあたって、開発担当者には開発した製品について、次のようなテストや検証を必要とします。
(1)開発したNGN端末のシグナリングをテストする。
(2)NGN端末の音声品質をテストおよび検証する。
(3)NGN端末のビデオ品質をテストおよび検証する。
(4)開発したNGNサーバのシグナリングをテストする。
(5)NGNサーバとNGN端末相互の互換性の検証をする。
(6)NGNネットワークの動作、帯域調整、エラー発生などのシミュレーション行いNGN端末・サーバの検証を行う。
RADVISIONのProLabテストツールは、これらのテスト・検証を行うツールであり、Windowsアプリケーションとして提供しています。ProLabテストツールが検証する具体的な機能は、図9に示すとおりです。
■ProLabテストツールはどのような機能をもっているのですか?
中山 ProLabテストツールは、サーバ-クライアント型のアプリケーションであり、次のような豊富な機能を備えています。
(1)音声や映像のマルチメディア対応である。
(2)シグナリング(呼制御)とメディアの両方を試験できる。
(3)100種類以上のスクリプトコマンド(簡易なプログラムによる命令)によって、さまざまなテストシナリオが簡単に作成できる
(4)シグナリングとメディアのモニタリング(監視)と解析ができる。
(5)RTPシミュレーションができる。
(6)テストシナリオのスケジューリング機能(自動試験実施機能)がある
(7)音声品質解析機能(MOSとPESQ ※6)がある
(8)画像品質解析機能がある。
また、最新バージョンの5.0では、1 IMSサーバシュミレータ、2 HD(High Definition)映像送信、3 試験結果自動解析などの機能が追加されています。
※6 用語解説
MOS:Mean Opinion Score、音声を多くの人に聞かせ、 主観的な評点をつけさせて平均の評点で音質を評価する方法(主観的評価)
PESQ:Perceptual Evaluation of Speech Quality、実際の音声データによる音質の評価 を行う方法(客観的評価)
≪4≫キャリア向けのビデオプラットフォームIVP
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■最近、キャリアにおいては、マルチメディアのうちとくにビデオ関係のトラフィックの伸びが顕著になってきていますが、ビデオ関係の製品については?
中山 RADVISIONは、XMLインタフェースを備え、ユニークなビデオアプリケーションサーバを構築できるIVP(Interactive Video Platform、双方向ビデオプラットフォーム)を主にキャリア向けに販売しています。そのIVPの特徴を整理しますと、次のようになります。
(1)トランスコーダ(画像符号変換器)、企業向けメディアサーバ、MRF(Media Resource Function、NGN内のメディアサーバ)の開発が可能
(2)QCIF、CIF、4CIFの映像をサポート
(3)異速度でのビデオ会議が可能
(4)NGN仕様に合わせてSIPをカスタマイズすることが可能
(5)XMLでアプリケーション開発が可能
(6)ビデオアプリケーションに必要なナビゲーションアプリケーションのサンプルコードもサポートし、魅力的なアプリケーション開発が容易に可能
このように、IVPは今後大いに期待される製品となっています。
≪5≫NGN時代のキラーアプリケーション(Video Share、ビデオシェア)
■NGN時代にはどんなキラーアプリケーションがありますか?
中山 最近、米国AT&Tが、携帯電話相互あるいは、携帯電話とIPビデオ端末の間で音声通話中に、ネットワーク設備に負担をかけずに、映像を送信したい時だけ一時的に映像をRTPで送信するというサービスを開始しました。この技術は標準化されており、RADVISIONも「Video Shareツールキット」として商品化しました。
2007年10月に、IMTCのIMSアクティビティグループが第1回目の「Video Share相互接続イベント」をRADVISIONの主催により開催する予定です。RADVISIONはIMTCのIMSアクティビティグループの議長を務めており、IMS・NGNの発展に積極的に貢献していきます。
■今後は、どのような展開になっていくのでしょうか?
中山 これからNGNの時代になり、これまでの通信の常識が大きく変化する時代に入ります。このNGNの進展に伴って、ユーザーにおける通信機器・情報端末・情報家電ならびにアプリケーションサーバの概念が大幅に変化していくことが予想されています。そのような新しい時代の端末やサーバの通信モジュールに、RADVISIONの開発ソリューションが、大いに活躍できると期待しています。
■ご多忙のところ、ありがとうございました。
プロフィール
![橋本 信氏](/sites/default/files/images/070928/profile.jpg)
中山惠介(なかやま しげよし)
現職:RADVISION(ラドビジョン)ジャパン
セールス・マネージャ
1986年 ネットワンシステムズ株式会社入社。主に製造系の企業にイーサネットネットワーク、TCP/IPネットワークシステムの普及に関わる。
1999年 シスコシステムズに入社、エンタープライズの顧客に100G/1G/10Gネットワークを提案。また、VoIP/セキュリティネットワーク/無線LANの導入を導く。
2005年からRADVISION Japanにてテクニカルビジネスユニットにてプロトコルスタックを情報家電向けソリューションとして提案活動を実施。