[スペシャルインタビュー]

KDDIのNGN/FMBC戦略を聞く(4):モバイルの常時接続サービス実現へ

2008/03/03
(月)
SmartGridニューズレター編集部

≪2≫FMBCのサービスで目指すこと

■国際的な傾向でもありますが、通信事業者はインフラ的なビジネスというよりも、サービスを提供することでお金を稼ぐという方向に力点を置かざるをえない状況となってきていますね。そうした背景で、御社が考えるNGN(FMBC)とはどういうものでしょうか。

安田 豊氏(KDDI 執行役員 コア技術統括本部長)
安田 豊氏
(KDDI 執行役員 コア技術統括本部長)

安田 NGNで何が必要かというと、
(1)QoS(サービス品質)
(2)セキュリティ(安全、安心)
(3)サービスの利用が面倒でないこと
ということだと考えています。

(1)QoS(サービス品質)

IP化された電話(IP電話)などではサービス品質について不安の声もありますが、弊社はこれまで品質向上の努力を重ねて相当の効果をあげてきました。NGNでは帯域確保など品質制御の機能が充実しますので、これまで以上にお客様のニーズにマッチしたサービスを提供できると考えています。

(2)セキュリティ(安全、安心)

簡単に言えば、NGNでは、スパムメールやウィルス、成りすまし、個人情報漏洩などに悩まされない新しいネットワークを提供するということです。いろいろな利用シーンに適したセキュリティを確保するためには、個人認証の標準化、本人の証明書、属性認証などをケータイのなかに仕組みとして入れることも必要です。そうした取り組みも進めています。ネットワーク・サービスとして、セキュリティや安全、信頼性は保障する。そうした安心して使えるネットワークのうえに、楽しいサービスを順次提供していきたいと考えています。例えば、家庭内の家電を外出先からコントロールするようなことなども、安全なネットワークがあればこそ、安心して利用できるサービスです。

(3)サービスの利用が面倒でないこと

NGNのサービスを利用するにあたって、ほとんど意識しないでも、驚くほど細かいサービスをしてくれるということが重要です。例えば、おサイフケータイやライフログ(図1)などのサービスです。おサイフケータイは、非接触ICカードのおかげで利用が面倒でないので、普及しましたね。また、自分の記録を取っておくライフログのサービスでは、GPSやカメラとも組み合わせることで、自分がしたことや行った場所、食べた物などを簡単に記録でき、健康管理などに役立てることができます。当社は、このようなサービスを具体化して、FMBCサービスとして提供していきたいと考えています。


図1 ライフログ・システム(安田氏資料より)(クリックで拡大)

■そのようなFMBCサービスは、いつ頃から提供する予定ですか。

安田 2008年からは、いよいよFMBCの具体的サービスを、順次提供していきます。FMBCのサービスは、ケータイとPCとの連携が中心になっていくと思いますが、すでに音楽ダウンロードのLISMOや、ブログ、SNSなどの利用は、ケータイからでもPCでも利用できるようになっています。また、SDカードなどのフラッシュメモリやオンライン・ストレージ、au案内ページなどについても、ケータイとPCどちらからでもデータをアップロードできますし、見ることができるなどサービスも提供しています。今後はさらに、テレビなどの映像系との連携を強めたサービスを提供していきたいと考えています。

現在でもワンセグがあり、ある程度は、ケータイとテレビが連携できるようになってきています。ワンセグでは、テレビを見ながら、リクエストして曲をダウンロードしたり、番組で紹介された商品を買うことができます。

今後は、ケータイに家庭内や車内にあるさまざまな機器をコントロールできる機能を持たせ、さらに広く活用できるようにしていきたいと思います。

例えば、外出先ではケータイの小型のディスプレイにテレビ放送を映して視聴し、家にいるのであればリビングの大型のデジタルテレビで視聴し、ケータイはテレビのコントローラ(リモコン)に、車の中であればカーナビのディスプレイに映し出すというように、そのときに近くにあるより大きな画面(ディスプレイ)を使えるようにすればよいのです。また。音楽を聴く場合には、ケータイよりも車のオーディオセットを使ったほうが、ずっときれいに聴くことができます。このように、その時々に応じて最適なメディア、機器、回線を使えるようにする、FMBCをそういう形で実現し、サービスを提供していくのが理想です。

■最後に。ユビキタス社会は、2010年か2012年に実現するのではないかと言われていますが、KDDIとしては、端末や通信の視点からユビキタス社会をどう考えていますか。

安田 ユビキタス社会とは、自分自身がいつ、どこにいても、最適なよいサービスを受けられることです。先ほど申し上げましたように、家の中では大画面のテレビやハイファイのオーディオで視聴し、外出先ではケータイを利用するというような具合です。今後、ケータイの機能はさらに向上し、ビジネスからエンタテインメントに至るまで、さらに広く活用され、広くユビキタス社会の中心的な端末になっていくと思います。

また、基本料金は現在よりも安くなっていきますが、無料ということにはなりませんね。無料ですとシステムの運用にコストがかけられなくなり、スパムメールやウイルスなどのリスクからユーザーを保護することができません。料金的には、サービス基本料金のほかに、セキュリティやマルチメディア・サービスなど、他のオプションを追加して、利用いただいた分の料金を加算していく形になると思います。どういうオプションがあるのか、それがどの程度の料金で提供できるのかということが、ユビキタス社会における通信キャリアの勝負になっていくでしょう。

■ありがとうございました。

おわり

プロフィール

安田 豊(やすだ ゆたか)

現職:KDDI(株) 執行役員 コア技術統括本部長

1975年 3月 京都大学大学院 工学研究科修了(電気系)
1975年 4月 国際電信電話(株)(KDD)入社 研究所 衛星通信研究室勤務
1984年 6月 インマルサット(本部:ロンドン)出向
1990年 7月 KDD本社 事業開発本部 移動通信室長
1994年11月 アステル東京出向(サービス開発部長など)
1998年 4月 KDD 本社 IMT-2000推進室長
2000年10月 KDDI(株)理事    移動体技術本部 モバイルIT部長
2001年 6月  同          技術開発本部   ITS推進部長
2002年 6月  同          au事業企画本部 サービス開発部長
2003年 4月  同  執行役員  au事業本部    au技術本部長
2005年12月  同          技術統轄本部長
2007年 4月  同          コア技術統括本部長

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