≪1≫NGNのコア・ルータからエッジ・ルータまで幅広い製品を提供
■シスコシステムズは、NGNをどのようにとらえているのでしょうか。
篠浦 文彦氏
(シスコシステムズ合同会社)
篠浦 当社は、ルータやスイッチなどのインフラ製品だけでなくNGN上のサービスやアプリケーション、あるいはビジネス・モデルなども含めて、NGN(シスコシステムズでは「IP NGN」と呼ぶ)を考えています。従来の通信事業者とベンダのようにネットワークのインフラをつくるという関係だけではなく、NGNが今後、世の中にどういうサービスを提供していくのか、その新しい可能性も含めてフォーカスしています。
今までの当社のアプローチは、インターネットのインフラをつくるところにフォーカスしていたのに、なぜNGNにフォーカスする戦略をとるようになったのか。その理由は、次世代のNGNへの大きな期待があり、今後のインフラの上でどのようにサービスを提供していくべきか、そのビジネス・チャンスをとらえようとしているからなのです。
■御社が提供しているNGN製品についてお話いただけますか。
篠浦 当社のNGN製品は、大きく分けて、通信事業者向けのバックボーン用のコア・ルータ(CRS ※)、エッジ・ルータとNGNを利用するエンドユーザー向けのルータやスイッチなどの装置全般を用意しています(図1)。
コア・ルータ、エッジ・ルータともに、特定の通信事業者ではなく、世界中のどの事業者のNGN構築にも対応できます。
さらに、新しいNGNに対応し、ユーザーが今までと異なったビジネスを展開できるような製品を提供することを目指しています。
※CRS:Carrier Routing System、NGNを実現する通信事業者向け大型ルータ
■NGNのルータ製品に使用されるSIP(セッション間プロトコル)には、国際的にみて通信事業者やベンダごとに異なる仕様、すなわち方言がたくさんあると聞きます。そうしたSIPの方言に対しては御社はどのように対応しているのでしょうか。
篠浦 当社は、これまでもIETF(インターネット技術標準化委員会)のSIPの標準化について積極的に関与しており、最近では、NGNに対応したセキュリティや信頼性の高いSIPについても積極的に取り組んでいます。
ただ、標準化が進んでも、すでに実装してしまったSIP製品が通信事業者の中にあるので、SIPの方言だけを直すことはできません。そこで、そうしたSIPのいろいろな方言のほとんどを備えている製品で対応する方針をとっています。通信事業者がサービスを指定すると、その通信事業者の使用しているSIPの方言を吸収できるようになるのです。これが本来の姿かどうかは別にして、現時点では現実的な対応だと考えています。
アプリケーションについていえば、NGNは、ネットワークをIP化するため、利用できるアプリケーションの幅が広がります。そこで、当社は図2のように、IIN(Intelligent Information Network)というコンセプトで、SIPに対応しているアプリケーションでも、非対応のアプリケーションでも、使うことができる仕組みになっています。
■想定しているNGNのマーケット規模をどのようにとらえていますか。
篠浦 マーケット規模については、日本の市場で見ると、例えばNTTの場合、NGNユーザーとして光回線の加入者をターゲットとしています。NTTでは、当初は3,000万回線といわれていましたが2008年2月時点では、2010年に2,000万の光回線が目標になっています。ですから、他の事業者の今後のサービス展開なども含めて、ルータについては台数として3,000万台ぐらいのマーケットのパイがあると見ています。