≪2≫NGNで変わるコミュニケーションのスタイル
■御社が考えるNGNサービスを提供するにあたって、他の企業とのパートナーシップをどのようにお考えですか。
篠浦 文彦氏
(シスコシステムズ合同会社)
篠浦 NGN上のメリットを使ったサービスを行うために、当社はいろいろなパートナーシップを考えています。例えば当社だけではハードウェアをつくれないので、家電メーカーなどとのアライアンスが必要です。また、コンテンツを中心にしたサービスを提供するために、複数の会社を買収したり、新しいパートナーシップづくりなどを考えています。
■パートナーシップの具体的な例はありますか。
篠浦 当社は2006年に、大リーグのOakland A's(オークランド・エーズ)という球団や、ユーザー向けにASPサービスを提供している企業であるWebEx(※)、複数のSNS関連企業など、当社の事業とは一見かかわりないような会社を買収しました。他にも、図2に示すように、積極的にM&A(企業の合併・統合)を進めています。その目的は、コンテンツやサービスを提供する機能を手に入れるためです。例えば、Oakland A'sの買収では大リーグのコンテンツを手に入れ、WebExやSNS企業の買収ではコラボレーションのためのインフラを手に入れました。
※WebEx:ウェブエックス。1996年設立、オンライン・ミーティングとウェブ会議サービス分野で約67%のシェアを獲得。http://www.webex.co.jp/
こうしてM&Aによって得たサービスと、当社がもともと持っていたテレプレゼンスのシステムを組み合わせると、例えば次のようなサービスが考えられます。
Oakland A'sの試合をテレプレゼンスのシステムを使って流すと、ホーム(家庭)が、ハイビジョン・クオリティの臨場感と、等身大の選手の映像を楽しめる仮想スタジオになります。家に居ながらにして、球場で体験するかのような迫力で大リーグの試合を見ながら、SNSで同じチームのファンたちと一緒に応援し、バーチャルなパーティを楽しむ……。これは技術的にはすべて可能な段階です。図3のように、A'sのスタジアムを核にして、家やモバイル、オフィス、学校など、どこからでもスタジアムとつながることで、新しいコラボレーションの可能性が生まれます。
このように、NGNによって、人のコミュニケーションとか、コラボレーションとか、コンテンツを楽しむという方法論、スタイルが全部変わっていくような新しいサービスが考えられます。
先ほどの例にあげた野球だけでなく、サッカーとか、ラグビーとか、音楽のコンサートなども可能でしょう。NGNのまったく新しいサービスは、なかなかユーザー自身では発想できないかもしれない。そこで、まず当社が、NGNならではの新しいサービスの可能性をユーザーに示すのです。新しいサービスのために必要なプラットフォームは当社で用意し、サービスを提供できる企業などとパートナーシップを組むことによって、新しい価値を創造し、ユーザーに提供していきたいと考えています。