LiveRidgeは2016年11月17日、IoT向けの無線通信技術LPWA(Low Power Wide Area)を利用した認知症高齢者の捜索サービスを「LiveAir」を開発し、実証実験に成功したと発表した。2017年春にこのサービスの市場投入を目指し、さらなる開発作業を進めていくとしている。
認知症高齢者が行方不明になった事態に備えた捜索システムはすでに存在しているが、通信コストがかさむ上、認知症高齢者が身に付ける通信機が消費する電力が問題になることがある。電池では通信機を長期間稼働させることができず、定期的に電池を交換あるいは充電する手間がかかるということだ。
LiveRidgeは、通信コストと電池による稼働期間の短さという2つの問題を解決するものとしてLPWAに注目した。そこで、IoT関連のハードウェア開発を手がける39Meisterと、企業向けのWebアプリケーション開発を手がけるヘッドウォータースの協力を得て「LiveAir」を開発した。
LiveAirでは、認知症高齢者が身に付けるGPS機能付き通信機を利用する。GPSから得られる現在位置情報を、通信機からLPWAでインターネット経由でサーバーに送信する。捜索に当たる人や家族は、サーバーのWebサイトで認知症高齢者の現在位置をつかめるという仕組みだ。
図 LiveAirのサービス全体像
出所 LiveRidge
実証実験は10月21日に、東京都世田谷区の介護デイサービス施設で実施した。認知症高齢者が行方不明になったことを想定して、通信機を身に着けた高齢者役の被験者が施設を離れた。5分後に行方不明であることが発覚したと想定し、捜索作業を開始。それぞれ異なる3カ所に配置しておいた捜索チームがLiveAirのWebサイトを見ながら捜索し、発見できた。この実験は3回実施し、いずれも15分以内で被験者を発見できたとしている。
図 LiveAirのWebサイトの画面。どの人がどこにいるかがすぐに分かる
出所 LiveRidge
実験では基地局となるアンテナを1本設置し、そのアンテナをインターネットにつながるゲートウェイに接続した。そして、通信機とアンテナの間は特定の方式ではなく、920MHz帯を使用する独自方式で通信するようにした。今回の実験はあくまでLiveAirが役立つことを実証することを目的としたものであり、特定の通信方式に決める必要はなかったとLiveRidgeの担当者は語った。
とはいえ2017年春のサービス開始を予定している以上、LPWAの通信方式は早々に決める必要がある。日本では、LPWA通信機能を提供する通信モジュールの流通が始まったばかりという状況だが、LiveRidgeの担当者は「規格策定などの動向を見ながら、事業化前にいずれかの規格に決める」としている。