東芝は2017年3月8日、リチウムイオン蓄電池の新製品「SIPシリーズ」を発表した。4月上旬に発売する。東芝が独自開発したリチウムイオン蓄電池セル「SCiB」を利用したもので、鉛蓄電池の置き換えを狙っている。
図 東芝の新しいリチウムイオン蓄電池「SIPシリーズ」
出所 東芝
SIPシリーズは東芝が開発販売しているリチウムイオン蓄電池セル「SCiB」の、蓄電容量が23Ahのものを11個直列で連結して箱に収めた。箱にはさらに、セルの電圧や温度を監視して、充放電を制御する回路を組み込んでいる。この回路は異常が発生する前に兆候をつかみ、充放電を制御することで異常発生を防ぐ。また、充放電を繰り返す「サイクル寿命」の延長にも役立っている。ちなみに東芝はSCiBセルについて、充放電を1万5000回以上繰り返しても性能はほとんど劣化しないとしている。
図 SCiBセルの蓄電容量が23Ahのもの
出所 東芝
東芝はSIPシリーズで、鉛蓄電池の置き換えを狙う。工場、物流倉庫などで稼働しているフォークリフトや無人搬送車、ゴルフ場で使用する電動カートなど、鉛蓄電池を電源としている機器は多い。サーバーのバックアップ電源となるUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)にも鉛蓄電池を使用しているものが多くある。
鉛蓄電池は安価であるという大きなメリットがあるが、充電には長い時間がかかり、満充電まで10時間あまりかかることも珍しくない。さらに、充放電の繰り返しに弱く、寿命が短いという短所もある。鉛蓄電池の寿命は長くても3年というところだ。しかも、電池自体が重いという問題もある。一般的な鉛蓄電池の重量は30kg程度だ。
一方、SIPシリーズは充放電の繰り返しに強いSCiBセルを使用している。東芝はSIPシリーズの寿命について10年程度は期待できるとしている。また、急速充電にも対応しており、SIPシリーズは約20分で満充電まで充電可能だ。蓄電池本体の重量も軽く、SIPシリーズの重量は1つ約8kgに収まっている。鉛蓄電池では充電に長い時間がかかるので、充電済の予備電池を用意して交換しながら運用することが多いが、SIPシリーズに交換すれば予備電池の準備はいらなくなる。
SIPシリーズは直流24Vの製品を2種類、直流48Vの製品を1種類売り出す。24Vの製品は、電池パッケージ単体で使用するものと、2つの電池パッケージを並列接続して使用するものの2種類がある。1つだけ使うものの蓄電容量は22Ahで、出力と入力は最大で3100W。この値を最長で200秒維持できるという。2つ並列で使うものは蓄電容量が44Ah。入力と出力の値は1つで使用するものと変わらない。
48V品は、24Vのパッケージ2つを直列で連結して使用する。蓄電容量は22Ah。入力と出力の最大値は6300Wで、この値を最長で200秒維持できる。電池パッケージの外形寸法は247×188×165mm。価格は3製品ともオープン。
SIPシリーズは鉛蓄電池に比べると効果だが、急速充電が可能な点と、充放電の繰り返しに強く、寿命が長いという点をアピールして売り込む構えだ。
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