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「自動運転」という言葉に誤解あり! 十分説明するよう国交省が業界団体に要請

2017/04/17
(月)
SmartGridニューズレター編集部

国土交通省は、各自動車メーカーの「自動運転」機能が完全な自動運転を意味するものではないということを運転者に向けて注意喚起する文書を発表した。

国土交通省は2017年4月14日、各自動車メーカーが実用化している「自動運転」機能が完全な自動運転を意味するものではないということを運転者に向けて注意喚起する文書を発表した。さらに、自動車関係の業界団体に向けて、この点を一般運転者に十分説明するよう要請した。要請を受けた団体は、一般社団法人日本自動車工業会、日本自動車輸入組合、一般社団法人日本自動車販売協会連合会、一般社団法人全国軽自動車協会連合会、一般社団法人日本中古自動車販売協会連合会の5団体。

注意喚起に至ったきっかけとなったのは2016年11月に千葉県八千代市で発生した交通事故。日産自動車の自動車販売店を訪れた一般運転者が、運転支援技術「プロパイロットシステム」を搭載した試乗車を運転していたときに発生した。

プロパイロットシステムは、運転者に代わってアクセル、ブレーキ、ステアリングを自動で制御するシステムだ。例えば高速道路が渋滞している時の低速走行時などに、前方の車両との距離を一定に保つようにアクセルとブレーキを自動で制御する。ただし日産自動車は同社のWebページで、プロパイロットシステムを「ドライバーの運転操作を支援するためのシステムであり、 自動運転システムではありません」と説明し、「高速道路や自動車専用道路で使用してください」と注意を促している。

八千代市で発生した事故では、一般運転者がプロパイロットシステム搭載車を試乗するときに、販売店の販売員が同乗していた。そしてこの販売員は、プロパイロットシステムについて誤った認識を持っていた。一般道を走行中に、前方に停車中の車両が見えてきたところで、販売員の誤った指示に運転者が従ってブレーキをかけずに走行を続けた。その結果、周囲の環境の影響もあって自動的にブレーキが作動することはなく、前方の車両に追突したのだ。この事故で、追突された車両に乗車中の2名が負傷した。

国土交通省は発表文で「現在実用化されている『自動運転』機能は、運転者が責任を持って安全運転を行うことを前提とした「運転支援技術」であり、運転者に代わって車が自律的に安全運転を行う、完全な自動運転ではありません」「運転者は、その機能の限界や注意点を正しく理解し、機能を過信せず、責任を持って安全運転を行う必要があります」と警告している。近年の運転支援技術の進歩には、目覚ましいものがある。その素晴らしさを表現する際に、「自動運転」という言葉をつい使ってしまうという方も多いだろう。

図 安全運転支援システム、自動走行システムの定義と、責任の所在をまとめた表。「準自動走行システム」と表現すべきところを「自動走行システム」と表現してしまっている例があることも指摘している

図 安全運転支援システム、自動走行システムの定義と、責任の所在をまとめた表。「準自動走行システム」と表現すべきところを「自動走行システム」と表現してしまっている例があることも指摘している

出所 国土交通省(「官民ITS構想・ロードマップ2016」より抜粋)

本来、運転支援システムは、その支援の度合いによって4つのレベルに分けて説明すべきものだ。日産自動車の「プロパイロットシステム」は、高速道路が渋滞している時の低速走行時などに利用すると「自動運転」と言いたくなってしまうほどの能力を発揮するが、国土交通省が定めている4段階のレベルで言えば「レベル2」に該当するものだ(上図赤枠の部分)。そして国土交通省は現在各メーカーが実用化しているものがあくまで「運転支援技術」であり、運転者が安全運転に責任をもつことが前提になるとしている。現時点では「自動運転」を実現する実用の技術(上図のレベル4に該当)は存在しないのだ。

国土交通省は今回の発表文で上述の5団体に対して、自動車販売員が機能の限界や注意点を正しく理解した上で、自動車を販売する際には一般運転者に十分説明するように求めている。また、一般運転者に対しては手持ちの乗用車が備えている運転支援技術について不明な点があるならば、販売店などにその機能や注意点を確認するように促している。完全な「自動運転」が実現する日は遠くないかもしれないが、世界を走るすべての自動車が一夜にして自動運転対応になるということはあり得ない。自動運転車と運転支援技術を持つ乗用車が混在する時期が来るだろう。その時に備えて、今から両者の違いを識別できる知識を身に付けておくべきだろう。


■リンク
国土交通省

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