オリックスは2017年5月8日、アメリカOrmat Technologies社の発行済み株式のおよそ22.1%をおよそ6億2700万米ドル(約707億円)で取得したと発表した。株式は複数の投資組合と、経営陣から譲渡を受けた。Ormat Technologies社のWebページによると、2017年3月16日時点の筆頭株主は10.74%の株式を保有している。オリックスは今回の出資で筆頭株主となる。
Ormat Technologies社は地熱発電の機器設計製造から、据付工事、さらには地熱資源の開発、地熱発電所の建設運営と、地熱発電に関わるほとんどすべてを手掛ける世界唯一の企業だ。全世界に納入した地熱発電設備は、出力合計でおよそ2200MW(220万kW)に上り、自身で開発、運営している地熱発電所の出力合計は727MWにも達する。
Ormat Technologies社は地熱発電技術の中でも特に、比較的低温の熱源で発電する「バイナリー発電」の機器で圧倒的なシェアを誇っている。現時点で、Ormat Technologies社が世界のバイナリー発電設備市場で獲得しているシェアはおよそ85%。九州電力が運営する日本最大の地熱発電所である「八丁原発電所」のバイナリー発電設備もOrmat Technologies社のものだ。
図 八丁原発電所のバイナリー発電設備。2004年の2月に稼働開始したもので、出力は2MW(2000kW)
出所 Ormat Technologies社
Ormat Technologies社への出資は、オリックスが今後地熱発電に注力するという姿勢の現れと見ることができる。オリックスは同社グループが運営する「別府 杉の井ホテル」(大分県別府市)で自家発電用としては日本最大規模となる「杉乃井地熱発電所」を保有、運営している。杉乃井地熱発電所の出力はおよそ1.9MW(1900kW)。発電した電力は杉乃井ホテルで消費し、発電時の得られる熱は給湯などに活用している。
さらにオリックスは2017年3月に東京都八丈町と協定を結び、老朽化が進んでいる「八丈島地熱発電所」を建て替え、新築の地熱発電所を運用することが決まっている(参考記事)。
オリックスは今後世界的に地熱発電の需要が高まると考えている。再生可能エネルギーとしては例外的に、設備利用率が高く気候や時間に関係なく発電できる。世界では地熱発電による電力を「ベースロード電源」と位置付けている例もある。
同社の調べでは2016年時点で世界で稼働している地熱発電設備の出力合計はおよそ14GW(1400万MW)。これが2021年になったら、23GW(2300万kW)以上に成長すると見ている。オリックスはOrmat Technologies社への出資をきっかけに、同社と提携し、日本とアジア諸国で地熱発電事業を推進していくとしている。日本の地熱資源量は世界でも有数の規模という調査結果がある。しかし、日本では地熱発電所の開発はほとんど進んでいない。オリックスにはこの状況を打破することを期待したい。