東京ガスは2017年5月23日、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)の発電効率を向上させる技術を開発し、試作環境で65%を達成したと発表した。SOFCは家庭用燃料電池「エネファーム」の燃料電池セルスタックとして広く普及している。都市ガスを改質して水素(H2)や一酸化炭素(CO)とし、それを燃料極で反応させることで発電する。SOFCを利用した市販の燃料電池の発電効率は45%~60%ほど。東京ガスは「現状の分散型電源としては最高の効率」としながら、さらなる効率向上が必要と考え、研究を続けていた。
発電効率向上のために東京ガスが選んだ方法は、燃料電池スタックを2段構成にするというものだ。一般的なSOFCでは、投入した燃料すべてを発電に使うことはない。SOFCスタックの劣化が進んでしまうからだ。投入した燃料のうち20%程度を使用せずに排出する製品がほとんどだ。東京ガスは、燃料電池スタックを2段構成にすることで、使用できる燃料の最大化を図った。
1段目のSOFCスタックでは燃料の70%程度を使用して発電し、残りの30%を2段目のSOFCスタックに回す。ただし、SOFCスタックの排ガスは、発電によって発生した水(H2O)と二酸化炭素(CO2)の濃度が高くなっている。そのまま2段目のSOFCスタックに回してしまっては、発電効率が落ちてしまう。そこで、2段目のSOFCスタックの前段に、H2OやCO2を除去して、H2とCOの濃度を上げる「燃料再生器」を設置した。
図 東京ガスはSOFCスタックを2段構成にすることで、より多くの燃料を使って発電することに成功した
出所 東京ガス
2段目のSOFCスタックにも工夫を加えた、少ない燃料でも発電するように小型化したのだ。そして、1段目、2段目それぞれでは燃料の70%を発電に利用し、30%程度を残すことで、SOFCスタックの劣化を防ぐように配慮した。この結果、投入した燃料のうち91%程度を発電に利用できた。
2段構成のSOFCスタックとその間に設置した燃料再生器の効果によって、東京ガスは出力5kW級の試作環境で直流にして73%、交流にして65%の発電効率を達成した。5kW級の機器で交流にして65%の発電効率を達成したのは、これが世界初の例になるという。
また、SOFCスタックを稼働させる環境を維持するための技術も投入した。SOFCスタックは一般に700℃~1000℃という高温の環境で動作する。高温を維持することで、燃料を燃料極で反応させて発電することや、燃料の改質が可能になる。そのため、SOFCを利用した市販の燃料電池では起動後に、十分に昇温するまである程度の時間を必要とすることが普通だ。
東京ガスは今回使用した試作環境において、SOFC自体が発電時に発生させる熱と、未利用の燃料を有効に活用して高温環境を維持するために、試作環境自体を小型化して放熱量を下げた。さらに、未利用燃料を従来よりも有効に活用する技術を開発し、試作環境に投入したという。
燃料電池、特にSOFCの効率向上に向けてはメーカーや研究機関が研究を重ねている。2017年4月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構とトヨタ自動車がトヨタ自動車の元町工場に設置した定置型SOFC燃料電池は、SOFCスタックの排気を燃焼させてタービンを回し、さらに発電過程で発生した熱も利用することで、発電と排熱回収を合わせてエネルギー使用効率65%を記録している(参考記事)。
今回、東京ガスが記録した交流で発電効率65%という数字は驚くべきものだ。しかし、定格出力5kWという小さな環境で実現したものだ。東京ガスは今回開発した技術を投入したプロトタイプの開発と、さらなる研究開発を進める意向を示している。さらに大規模な発電設備に、今回東京ガスが開発した技術を応用できるようになることを期待したい。
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