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廃プラスチックから得た水素で発電しホテルに供給、東芝が純水素燃料電池を受注

2017/06/07
(水)
SmartGridニューズレター編集部

東芝は、昭和電工から純水素燃料電池を1台受注したと発表した。

東芝は2017年6月5日、昭和電工から純水素燃料電池を1台受注したと発表した。2017年4月末に山口県周南市の地方卸売市場に納入したものと同じ型で、出力は100kWだ(参考記事)。

図 東芝の純水素燃料電池。出力は100kW

図 東芝の純水素燃料電池。出力は100kW

出所 東芝

発注した昭和電工は現在、川崎臨海部にある昭和電工川崎事業所で使用済みプラスチックから得た水素を有効活用する実証事業に取り組んでいる。環境省公募の「2015年度地域連携・低炭素水素技術実証事業」の採択を受けて実証しているものだ。事業所が立地する川崎市とも提携し、関係事業者間の調整、許認可取得関連の支援などの形で協力を得ている。

プラスチックの主成分は炭化水素であり、炭化水素は炭素分子と水素分子が結合したものだ。昭和電工の実証事業は炭化水素から水素とCO2を分離し、水素を燃料電池などで活用しようというものだ。

使用済みプラスチックから水素を得るには、まずプラスチックを破砕して細かい欠片にする。これを2段階のガス化炉に投入して水素を取り出す。1段階目のガス化炉では比較的低温で加熱する。炉の底部にある高温の砂がプラスチックを炭化水素を含むガスや炭化固形物、塩化水素などに分割する。

こうして得たガスを2段階目のガス化炉に投入する。ここでは酸素と水蒸気を加えながら高温で加熱する。これで炭化水素をCOとH2に分解できる。さらに別の設備で水蒸気と反応させることでCOをCO2にする。これで廃プラスチックから水素H2と二酸化炭素(CO2)を得ることができる。昭和電工はこうして得たガスでアンモニアを生成したり、ドライアイス、液化炭酸ガスなどに加工するなどしていたが、燃料電池などの登場で水素の使いみちが広がったことで、発電などに利用することを考えた。

昭和電工は、今回東芝に発注した燃料電池を、大和ハウス工業が建設中の「東急REIホテル」に設置する。このホテルは川崎市川崎区殿町の再開発地域「キングスカイフロント地区」に立地しており、2018年春に開業の予定となっている。羽田空港から自動車で10分ほどの距離にあることから、空港利用者の宿泊が期待できるホテルだ。

図 殿町のキングスカイフロント地区に建設中の「東急REIホテル」の完成イメージ

図 殿町のキングスカイフロント地区に建設中の「東急REIホテル」の完成イメージ

出所 東急ホテルズ

昭和電工が精製した水素は、燃料電池を設置した東急REIホテルまでパイプラインで常時輸送する計画。燃料電池が発電した電力は東急REIホテルで消費する電力の一部となる。発電時に発生する熱も給湯などの形でホテルで利用する。

東芝は今後、純水素燃料電池に限らず、水素の製造から活用に関わる技術の開発を進めるとしている。


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東芝

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