アズビル、アズビル金門、東京ガス、東京ガスリキッドホールディングスの4社は2017年6月5日、LPガスボンベの配送効率向上を狙って、LoRaWANを活用した実証実験を実施すると発表した。世帯ごとのガス使用量をメーターからLoRaWANで送信し、交換が必要な世帯のみに効率良く配送する体制を作ることを目指す。実験は9月から開始する。
現在、一般的なLPガス販売事業者は検針員が契約世帯を月に1度訪問して、ガスメーターの検針値を目視して残量を予測し、次回配送時期を決めている。しかし、月に1度の検針では正確に消費量を予測することは不可能。さらに、契約世帯のガス消費量は生活パターンの変化や急な気温変化によって大きく変動する。そのため現在ではガスが切れてしまう事態を防止するために、仕様中のLPガスボンベ内に十分なガスが残っていてもボンベを交換することがあるという。
このような現状を解決するために、今回の実験ではガスメーターにLoRaWANの通信機を設置し、遠隔地から各世帯のガス消費量をこまめにチェックすることで、それぞれの世帯のガス残量を正確に把握する体制を作る。通信装置はアズビル金門が開発した2種類の機器を使う。1つ目は既存のガスメーターに取付可能なLoRaWAN対応通信機器。もう1つはさまざまな通信モジュールを内蔵可能になっているガスメーター「K-SMα」。ちなみにこの製品は5月に供給が始まったばかりのものだ。
これら2種類の通信機を特定地域に集中的に設置して、LoRaWANネットワークを構築し、ガス使用量を把握するシステムの実用化に向けた課題を抽出するとともに、LoRaWANネットワークに通信性能を検証する。
さらに各世帯からのデータが集まるようになったら、各世帯のガス残量などのデータを解析することで、LPガスボンベの適切な配送日時、適切な配送本数、適切な配送ルートを自動算出するシステムも稼働させる。これで、各世帯のLPガスの残容量がほとんどなくなったところでタイミング良く配送することが可能になる。配送ルートも極力無駄がないものとすることが可能だ。
図 各世帯のLPガス消費量を正確に把握し、効率良く配送する
出所 アズビル金門
この実験ではアズビル金門がLPガスメーターとLoRaWAN通信装置を提供し、LPガスボンベの配送方法を効率の良いものにするシステムの開発を担当する。そして、東京ガスリキッドホールディングスは、実証実験を実施する地域の選定、検診データの収集と提供、データを活用したLPガス配送方法の改善案提示を担当する。アズビルと東京ガスは両社の親会社として、それぞれ子会社を支援する。
ちなみに経済産業省は「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」で、契約者の安全を確保するために「集中監視システム」などを導入することをLPガス販売事業者に推奨している。今回LoRaWANで構成するシステムは「集中監視システム」の側面も持っており、緊急時に契約者宅のガス供給を遠隔操作で遮断することも可能だという。
東京ガスと、東京ガスリキッドホールディングスは、今回の実証実験で得た経験や知見を活かして業務効率化、保安確保の体制確立などに取り組み、契約者のガス料金低減につなげたいとしている。