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再エネの現地での活用を目指す、IHIらが福島県相馬市に電気事業会社を設立

2017/06/09
(金)
SmartGridニューズレター編集部

IHI、パシフィックパワー、福島県相馬市は、相馬市内の太陽光発電所による電力を地元で活用することを目指して、特定送配電・小売電気事業会社を設立したと発表した。

IHI、パシフィックパワー、福島県相馬市は2017年6月7日、相馬市内の太陽光発電所による電力を地元で活用することを目指して、特定送配電・小売電気事業会社「そうまIグリッド合同会社」を設立したと発表した。出資比率はIHIが85%、相馬市が10%、パシフィックパワーが5%。自営線を設置して顧客に電力を届ける特定送配電と、一般の送配電ネットワークを通して太陽光発電所や市場から調達した電力を小売する事業を展開していく。小売電気事業は2017年度後半に、特定送配電事業は2018年度に開始する予定。

図 新設の電力事業会社が手掛ける事業

図 新設の電力事業会社が手掛ける事業

出所 IHI

太陽光発電など再生可能エネルギーによる発電設備が急速に普及する一方で、発電する電力すべてを電力会社の送電系統に接続できないという例が増えている。この問題が電気事業会社設立のきっかけの1つとなったという。さらに、2015年に復興庁から採択を受けたモデル事業「水素を活用したCO2フリーの循環型社会創り」を実現するという目的もある。

今回の事業では出力1.6MW(1600kW)の太陽光発電所を相馬市にある「中核工業団地」東地区に新設する。そこから工業団地に隣接する下水処理場や汚泥乾燥設備、IHIが運営する水素研究エリアまで自営線を引いて電力を供給する。太陽光発電所には大規模蓄電池も併設し、夜間や悪天候時など、太陽光発電所からの電力を期待できないときは蓄電池から電力を供給する。下水処理場や汚泥乾燥設備では供給を受けた電力を消費し、水素研究エリアでは水電解設備で水素を生成する。生成した水素は災害などで電力供給が止まったときに、燃料電池に供給して発電し、周囲に電力を供給する。

また、そうまIグリッド合同会社が構築する地域エネルギーマネジメントシステム(Community Energy Management System:CEMS)と、IHIが運営する水素研究エリアを有効活用することで、相馬市で発電した再生可能エネルギー由来の電力を地元ですべて活用することを目指す。さらに以上の設備をうまく活用し、地域主導で再生可能エネルギーの活用が進む事業モデル構築を目指す。再生可能エネルギーを活用して地元で発電した電力を電力会社に売電することなく、さまざまな形で地元ですべて活用するというモデルだ。電力会社の力を借りることなく、地元で発電した電力が地元の各地に届くことを目指すものとも言える。

図 今回の事業で実現を目指す、地域の将来像

図 今回の事業で実現を目指す、地域の将来像

出所 IHI

IHIは相馬市に航空機エンジン部品の生産拠点を置いていることも、今回の事業に参加する動機になったとしている。生産拠点が存在する地域の復興、そして振興に協力できればという思いがあるという。そして、今回の事業で再生可能エネルギー由来の電力を地域で有効活用するモデルを構築できたら、ほかの地域にもこのモデルを広げられればと考えているという。


■リンク
IHI
パシフィックパワー
福島県相馬市

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