東海旅客鉄道(JR東海)は2017年6月7日、特急「ひだ」「南紀」に使用している車両に、ハイブリッド車を導入する計画を明らかにした。2019年末までに試験走行車両1編成(4両)を完成させ、試験走行を開始する。2022年には量産車を路線に投入することを目指している。
図 JR東海が導入を企画しているハイブリッド車のデザインイメージ
出所 東海旅客鉄道
特急「ひだ」と「南紀」はそれぞれ未電化区間を走行するため、一般的な「電車」では運行できない。「ひだ」は名古屋駅あるいは大阪駅を起点として、岐阜駅から高山本線に入り、終点である高山駅、飛騨古川駅、富山駅を目指して走る列車だが、岐阜駅から猪谷(いのたに)駅間の189.2kmは未電化となっている。
「南紀」は名古屋駅を出発して、紀伊勝浦駅あるいは新宮駅を終点として走行する列車だ。亀山駅から紀勢本線に入るが、亀山駅から新宮駅までの180.2kmが未電化だ。
現在、JR東海は「ひだ」と「南紀」を「キハ85系」の「気動車」で運行している。気動車とは車両に搭載したエンジンで駆動する車両だ。現在は1両につき出力350馬力のエンジンを2つ搭載して運行している。
図 現在、JR東海が運行しているキハ85系気動車。1両ごとに2つのエンジンを搭載している
出所 東海旅客鉄道
JR東海は、新造を予定しているハイブリッド車両の駆動方式として「シリーズ方式」を導入する予定を明らかにしている。車軸の駆動と動力回生による充電はモーターが担当し、エンジンは発電に専念し、動力源とはしない方式だ。モーターは1両当たり2台搭載する。
図 新造のハイブリッド車に導入を予定している駆動方式(左)と、現在JR東海が運行しているキハ85系気動車の駆動方式(右)
出所 東海旅客鉄道
列車の加速時は基本的にエンジンが発電した電力を使用し、必要に応じて蓄電池に充電しておいた電力も加えることで速度を上げる。車両が停車駅に近づいたときなど、ブレーキをかけたときはモーターの回生ブレーキで電力を発生させて、蓄電池に充電する。駅停車時は発電用のエンジンを停止させ、発進時は蓄電池の電力だけでモーターを駆動することで、騒音の低減も目指す。
JR東海はハイブリッド車への転換によって、燃費をおよそ15%削減できるという点のほかに、乗り心地がよくなるという利点を挙げている。気動車では、変速機で変速しながら走行していたが、変速時に多少の衝撃があるという。さらにエンジンが1両当たり2台から1台に減り、駅停車時はエンジンを停止させることで、騒音も低減できるとしている。
また、モーター駆動に転換することでエンジン特有の回転部品が減少し、車両の信頼性が高まるとしている。また、メンテナンス用の機器や工具として、電車用のものを流用することで、メンテナンスで作業員にかかる負荷を軽減し、メンテナンス体制構築のためのコストを抑えられるとしている。
どのような車両ができるのか楽しみだが、JR東海によると現時点では車両の共同開発を依頼するメーカーを選定中であり、モーターの出力や蓄電池の蓄電容量などの仕様はメーカーが決まった後に協議して決めるとしている。
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