三井住友建設は2017年6月16日、災害などによる大規模停電時に、船舶で発電した電力を動力電源として建物で利用するシステム「陸・海電力コネクティングシステム」を開発し、実際の建物で実証試験を実施したと発表した。システムは東京海洋大学と共同で開発した。
このシステムは、大規模停電時に建物のエレベーターなどを動かす「動力電源」を供給することを狙ったもの。停電時も電力供給を続けられるように発電機を備える建物もあるが、防災設備への電源供給を目的としたもので、エレベーターまで動かせる発電機を備える建物は多くない。そして、小規模な建物では発電機などを備えていないので、停電が発生するとすべての電気設備が停止する。
建物の非常用電源として電気自動車(EV)を利用する動きもあるが、EVが建物に供給する電力は電灯単相3線式200V/100V。動力電源である動力三相200Vは供給できない。EVが供給する電力ではエレベーターを動作させることはできない。
今回三井住友建設が東京海洋大学と共同で開発した「陸・海電力コネクティングシステム」は、船舶のエンジンで発電した電力をEVに供給し、EVが目的の建物まで走行して電力を供給するというもの。EVの電力では動力電源を供給できないが、その点は電灯電源を動力電源に変換する「交流電源安定装置」を設置することで解決した。
図 三井住友建設が東京海洋大学と共同で開発した「陸・海電力コネクティングシステム」の大まかなイメージ
出所 三井住友建設
三井住友建設は、このシステムの効果を実証するために横須賀市の協力を得て実証試験を6月10日に実施した。横須賀市役所の久里浜行政センターにEVの蓄電池(6kW)かた電力を供給し、エレベーターを動作させてみた。エレベーターの消費電力は3.5kWで、建物は3階建てだ。
エレベーター稼働中の消費電力のデータを検証したところ、エレベーターの積載量を適切に制御することで、始動にかかる電力を抑制でき、結果として少ない電力でエレベーターの稼働回数を増やせるということが判明したという。
三井住友建設は今後、都内の6階建てあるいはそれ以上の高層賃貸住宅でエレベーターを稼働させる実証試験を予定しているという。今回の試験と、都内で予定している試験で稼働に関わるノウハウを蓄積し、少ない電力でも効率よく稼働させることが可能なエレベーターの規模や、稼働可能な回数などを検証し、実用化を目指すとしている。さらに、非常時に電源となる船舶や電力を運搬するEVを確保する運用体制なども検討していくとしている。
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三井住友建設