ドイツの風力発電事業者であるABO Windは2017年11月23日(ドイツ時間)、建設中の風力発電所からの電力で水素を生成し、ステーションで燃料電池車(FCV)に供給する計画を発表した。ドイツ・ヘッセン州で同社が建設中の風力発電所が発電する電力の一部を利用する計画だ。2018年には試験施設として小規模な水素ステーションを建設し、運用を始める。
図 Daimlerが、9月のフランクフルトモーターショーで公開した燃料電池車「Mercedes-Benz GLC F-CELL」
出所 Daimler
建設中の発電所は間もなく完成する予定で、ドイツNordex製の出力3.3MW(3300kW)の発電設備を3基設置しており、合計最大出力は9.9MW(9900kW)。年間で30GWh(3000万kWh)を発電する見込みだ。設備利用率はおよそ34.6%となる。ここで発電した電力は送電網を経由して、一般世帯などに供給することになっているが、電力の一部を水電解装置に供給して、水から水素を生成する計画だ。当面は小規模な試験施設の運営で、この計画の可能性を検証するが、ABO Windは周囲を走るパイプラインを通して遠隔地に水素を供給することも視野に入れている。
図 計画の概要。風力発電所で発電した電力の一部を水電解装置に供給して、水から水素を生成する。水素は水素輸送用ボンベ(カードル)に入れてステーションに配送する
出所 ABO Wind
2018年に稼働を始める試験用水素ステーションは小型の水電解装置を備え、ステーション内で水から水素を生成できる。このステーションの水素供給能力は、1日に2台~4台のFCVに水素を供給できる程度のものになるという。この計画が実用のものとして動き始めたら、1日に合計で200台程度のFCVに水素を供給する態勢を作ることを予定している。
ちなみにABO Windは、FCVがバスや物流用トラックなどの大型車両から普及すると考えているようだ。この計画の説明会にも物流コンサルタントや燃料電池バスのメーカーを招き、各社の事業計画を説明する時間を設けていた。
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ABO Wind