[ニュース]

「釘を刺しても発火しません」、日立と東北大学が安全性が高いリチウムイオン蓄電池を開発

2018/02/16
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

日立製作所と東北大学の研究グループは、一般に普及しているリチウムイオン蓄電池よりも安全性を高めたものの試作に成功したと発表した。

日立製作所と国立大学法人東北大学多元物質科学研究所の本間格(いたる)教授の研究グループは2018年2月16日、一般に普及しているリチウムイオン蓄電池よりも安全性を高めたものの試作に成功したと発表した。蓄電容量100Whのラミネート型蓄電池を試作。充放電の性能を確認し、蓄電池に釘を刺す試験を実施したが、発火しなかったという。

図 現在流通しているリチウムイオン蓄電池は釘を刺すと発火するが(左)、今回試作したものは発火しない(右)

図 現在流通しているリチウムイオン蓄電池は釘を刺すと発火するが(左)、今回試作したものは発火しない(右)

出所 日立製作所

現在流通しているリチウムイオン蓄電池は、発火点が20℃以下の有機溶媒を電解液として使用しており、扱いを誤ると簡単に発火してしまう。釘を刺すと、まず間違いなく発火する。現在は、こういった事故を防ぐために発火を抑える補強材や冷却機構を蓄電池に組み合わせており、簡単に発火することはないが、補強材などが邪魔をして小型化が難しいという問題がある。

今回は発火点が高い新しい電解質を開発し、それを利用した蓄電池を試作した。既存の電解質よりも発火点が100℃以上高くなった。加えて、正極と負極の間をリチウムイオンがより速く移動できる成分を使用し、充放電性能を高めた。新開発の電解質は既存のものよりもリチウムイオンがおよそ4倍速く移動できるという。

この結果、試作のリチウムイオン蓄電池は既存のものよりも高い充放電性能を発揮しながら、釘を刺しても発火しないほどの安全性を両立させた。この蓄電池を利用すれば、従来必要だった補強材や冷却機構が不要になり、小型化と低価格化を期待できる。

日立製作所と東北大学は、今回試作したリチウムイオン蓄電池の実用化を視野に入れて、さらにエネルギー密度を高め、充放電時間を短縮するなど、性能向上に向けた研究を続けるとしている。


■リンク
日立製作所
国立大学法人東北大学

TOPに戻る

関連記事
新刊情報
5G NR(新無線方式)と5Gコアを徹底解説! 本書は2018年9月に出版された『5G教科書』の続編です。5G NR(新無線方式)や5GC(コア・ネットワーク)などの5G技術とネットワークの進化、5...
攻撃者視点によるハッキング体験! 本書は、IoT機器の開発者や品質保証の担当者が、攻撃者の視点に立ってセキュリティ検証を実践するための手法を、事例とともに詳細に解説したものです。実際のサンプル機器に...
本書は、ブロックチェーン技術の電力・エネルギー分野での応用に焦点を当て、その基本的な概念から、世界と日本の応用事例(実証も含む)、法規制や標準化、ビジネスモデルまで、他書では解説されていないアプリケー...