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ブラザー工業が産業用燃料電池の市場に参入、独自開発技術で発電量を2倍に高めた新製品

2018/02/22
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

ブラザー工業は、水素燃料電池の新製品「BFC4-5000-DC380V」の受注を開始すると発表した。

ブラザー工業は2018年2月22日、水素燃料電池の新製品「BFC4-5000-DC380V」の受注を開始すると発表した。注文は2月28日から受け付ける。独自技術で発電能力を大きく高めた自社開発製品で、燃料電池市場に新たに参入する。

図 ブラザー工業が独自開発した水素燃料電池

図 ブラザー工業が独自開発した水素燃料電池

出所 ブラザー工業

ブラザー工業が始めて燃料電池市場に投入するこの製品には、ブラザー独自の機能が備わっている。燃料電池スタックは固体高分子型燃料電池(PCFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)。独自の「気液分離」技術を投入することで、同じ規模の水素燃料電池と比べて発電量を2倍に高めた。下図は外形寸法が同等な従来製品とブラザー工業の新製品の、駆動電圧の変化を示したもの。

図 従来製品(灰色)は運転開始後から駆動電圧がどんどん低下し、22時間程度で-0.09Vまで下降する。一方でブラザー工業の新製品(青)は72時間運転しても駆動電圧が0.01Vしか下がっていない

図 従来製品(灰色)は運転開始後から駆動電圧がどんどん低下し、22時間程度で-0.09Vまで下降する。一方でブラザー工業の新製品(青)は72時間運転しても駆動電圧が0.01Vしか下がっていない

出所 ブラザー工業

ブラザー工業は、災害などによる停電を復旧させるには、大体72時間かかっていることを指摘し、新製品は災害発生時も復旧まで電力を供給し続ける能力があるとアピールしている。そして、長期間安定運転を実現させたのは、ブラザー独自の「気液分離」技術だ。

水素燃料電池は、水素を燃料電池に投入すると、大気中の酸素と反応させて電力と水を発生させる。ただし、燃料電池は投入した水素をすべて発電に活用できているわけではない。数割の水素は利用できないまま水と一緒に排出していた。

ブラザーの「気液分離」は、燃料電池が発電後に排出する水と水素の混合体から水素だけを回収して、再び燃料電池に投入するというものだ。下の図は、その概要だ。従来は、燃料電池が活用しきれなかった水素を、水との混合状態で排出していた。ブラザーは燃料電池が水と混合状態で排出する水素を回収。水との混合状態にあるところから、水素だけを回収する。そして、回収した水素を再び燃料電池に送り込む。この効果によって、燃料である水素を高い効率で活用でき、長時間に渡る連続運転も実現した。他社の同規模の製品に比べて、ブラザー工業の燃料電池は倍の量の電力を発電するという。

図 ブラザー工業が独自開発した気液分離技術。燃料電池が使用しきれなかった水素と水の混合体から水素のみを回収して、再び燃料電池に投入する

図 ブラザー工業が独自開発した気液分離技術。燃料電池が使用しきれなかった水素と水の混合体から水素のみを回収して、再び燃料電池に投入する

出所 ブラザー工業

ほかにも、使用者の消費電力量が急激に上昇したときに、素早く反応し、短時間でユーザーが必要としている電力を供給するという特徴や、インターネット接続に対応しているといった特徴も挙げられる。インターネットに接続すると、遠隔地からでも、個々の製品のユーザーに提供する専用Webページにアクセスすることで、発電量や燃料残量などの情報をグラフなどの見て分かりやすい形で確認できるようになる。

ブラザー工業は今後、この製品を企業や自治体に提案していく。その際に、提案相手の設置環境などをみて、発電時に発生する熱を利用した「コージェネレーションシステム」などの形で提案していくという。


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ブラザー工業

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