Volkswagen Groupは2018年6月25日(アメリカ山岳部標準時)、2018年のThe Pikes Peak International Hill Climbに出走した電気自動車(EV)「I.D. R Pikes Peak」が、大会記録となる7分57秒148を記録したと発表した。I.D. R Pikes Peakは、The Pikes Peak International Hill Climbの改造電気自動車部門の新記録を狙ってVolkswagenが開発した電気自動車(参考記事)。2つのモーターを搭載した4輪駆動車で、680馬力(500kW)を発揮する。
図 The Pikes Peak International Hill Climbのコースを走行する「I.D. R Pikes Peak」
出所 Volkswagen Group
The Pikes Peak International Hill Climbにおける改造電気自動車部門の最速記録は、2016年大会でリース・ミレン(Rhys Millen)選手がラトビアのDrive eO社が開発したEV「eO PP100」で記録した8分57秒118だった。I.D. R Pikes Peakはこの記録を約1分短縮し、総合部門の最速記録も更新した。前年までの総合記録は、フランスのセバスチャン・ローブ(Sébastien Loeb)選手が「Peugeot 208 T16 Pikes Peak」で記録した8分13秒878だ。この車両はフランスPeugeotの乗用車「Peugeot 208」をを基にした改造車両で、標準で搭載している直列4気筒、排気量1400ccのエンジンを、V型6気筒で排気量3200ccのエンジンに載せ替えて、ターボチャージャーを2つ搭載している。さらに、4輪駆動に改造している。出力は最大で875馬力に達する。
Volkswagen Groupは2017年10月に専用のEVでThe Pikes Peak International Hill Climbに挑戦することを明らかにしている(参考記事)。I.D. R Pikes Peakは、なるべく出力が大きなモーターを搭載しながら車体を軽量化した。その結果、車体重量は1100kgを下回った。また、コンピュータシミュレーションを繰り返して、記録を更新するにはダウンフォース(タイヤを地面に押し付ける力)が鍵になると突き止めた。高地では空気が薄くなり、平地よりもダウンフォースが弱くなるという。そこで、I.D. R Pikes Peakは車体を平坦に近い流線型に仕上げ、大型のリアウイングを搭載した。
The Pikes Peak International Hill Climbは、コロラド州にある山岳「Pikes Peak」を標高9390フィート(約2862m)の地点から、標高1万4115フィート(約4302m)の山頂まで駆け抜けるレースだ。コースの全長は12.42マイル(約20km)で、スタート地点から山頂までの間には156の急カーブがある。
コースの平均斜度は7%で、最大で10.5%。スタート地点から山頂までの標高差は4325フィート(約1318m)だ。標高が高い場所では空気が薄くなるため、空気とガソリンの混合気を燃焼させるガソリンエンジンは、出力が30%ほど低下する。Volkswagenは1987年にエンジンを2台搭載した「Golf」で挑戦したが、リタイヤしていた。
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